中山氏は、日本でのイノベーション創出を実現するためには、「数ある基盤の中で医療DBの充実が最も重要。遺伝子情報や疾患情報、治療履歴を活用できれば、各社も新薬開発がやりやすくなる。日本のように均質な民族性のあるところでDBを持てば強みになるし、国際的な競争優位性に結びついていく」と強調。次世代医療基盤法を適切に運用しながら、将来的には医療等IDを導入し、国民が一生涯にわたる健康データと連結させ、治療満足度が低い領域で新薬を開発できる基盤整備を求めた。さらに、バイオバンクの整備や臨床サンプルの利活用に向けた環境構築や、日本での前向きコホート研究の推進も「臨床のエビデンス構築に重要な取り組み」と語った。
産官学が連携して新薬開発につなげる創薬エコシステムの構築では、アカデミアの基礎研究力強化とバイオベンチャー育成を挙げた。中山氏は、「日本のバイオベンチャーにとって大事なのはアセットで、その背景には日本のアカデミアの研究の深さがある。これまで優れた研究成果を残したアカデミアだが、大分疲れている」と業界としてサポートしていく重要性を指摘。バイオベンチャーの育成については、「最初の立ち上がりのサポートだけではなく、成熟した企業になるために、長期的にきめ細かな支援をしていかないといけない」と語った。
現在、直面している薬価制度への対応では、新薬創出等加算の対象品目が大幅に削られたことについて、品目要件と企業要件の見直しを提言する。「見直しによる影響について分析・検証を行い、あるべき制度について理論構築し、提案していきたい」と述べた。消費増税に伴う薬価改定は「消費税増税が延期されれば来年度改定は行われるべきではない」との立場を取り、費用対効果評価の導入も「イノベーションの阻害、患者アクセス制限、ドラッグラグの助長につながらないことが前提になる」と慎重な考えを示した。
一方、来年度の研究開発税制改正に向けては、「研究開発投資に積極的な企業への投資インセンティブを高める必要がある」とし、時限措置の延長と制度化を要望した。