CDIは、抗菌薬の投与などによって腸内細菌叢が乱れ、CDが腸内で増殖して下痢や炎症を引き起こす疾患。再発や難治化、重症に至る症例も存在し、臨床現場で対応に苦慮することも少なくないため、標準的な診療指針の策定が望まれていた。こうした背景から両学会はCDI診療ガイドライン作成委員会(委員長:聖マリアンナ医科大学感染症学講座・國島広之氏)を立ち上げて検討を実施。このほどその内容がほぼ固まった。
策定に関わったメンバーらは5月31日から3日間、岡山市内で開かれた日本感染症学会学術講演会・日本化学療法学会総会のシンポジウムに登壇。それぞれのポイントを解説した。
CDIの薬物療法について現案では、CDI初発の場合、非重症の症例ではメトロニダゾールを第一選択薬として推奨。アレルギーや副作用で同剤を使用できない場合や妊婦・授乳婦の場合には、第二選択薬としてバンコマイシンを推奨している。
松元一明氏(慶應義塾大学薬学部薬効解析学講座)は「メタアナリシスを実施した結果、非重症の場合、CDIの治療効果においてメトロニダゾールとバンコマイシンに差はなかった。メトロニダゾールは薬価が安く、バンコマイシンは使用量が増えると耐性腸球菌の発現が懸念されるため、メトロニダゾールを第一選択薬にした」と説明した。
一方、CDI初発の重症症例ではバンコマイシンを第一選択薬として推奨している。「重症の症例を解析すると、バンコマイシンの方がメトロニダゾールより有意に治療効果が高かった」と松元氏は話した。
CDI再発の症例には、バンコマイシンまたはフィダキソマイシンを第一選択薬に推奨し、メトロニダゾールは第二選択薬にも含めなかった。高用量、長期投与によってメトロニダゾールの副作用が発現しやすくなるため、初発の非重症の症例のみの推奨にしたという。
このほか、CDI難治の症例にはフィダキソマイシンを第一選択薬として推奨している。
バンコマイシンの高用量投与やメトロニダゾールとの併用、パルス・漸減療法については、エビデンスは十分ではないものの、経験的に実施されていたり、他の選択肢が限られていたりするため、弱い推奨度で記載している。
CDIの再発予防策については大毛宏喜氏(広島大学病院感染症科)が解説。欧米での臨床研究の結果「フィダキソマイシンの治療反応性はバンコマイシンと同等だが、再発予防率は上回っている。再発例、再発リスクの高い症例ではこの薬剤は有用ではないか」と指摘した。
再発予防に日本で使われるプロバイオティクスは「海外のガイドラインではそもそも記載がない場合もある。再発予防効果が報告されているが、エビデンスレベルは低い。データが十分ではないため、弱い推奨度にした」と語った。