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【岩手県立宮古病院薬剤科】病棟業務の介入効果実証-医療経済効果は約800万円

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2018年06月01日 AM10:30


■積極的な処方提案明らかに

病棟薬剤師が処方提案等の薬学的介入を行ったところ、3年間で約800万円の医療経済効果が得られたことが、岩手県立宮古病院薬剤科のグループの研究で明らかになった。年間で約260万円の効果があると推計され、ハイリスク薬以外の医薬品の処方提案を行った事例で削減額が最も大きかった。癌化学療法への介入事例も14件で約157万円と件数に対する削減効果は高かった。病棟薬剤師による処方提案は、副作用対策や不要薬の中止がほとんどで、病棟業務での積極的な薬学的介入により、薬剤師の医療経済的な貢献が裏づけられた格好だ。

2012年度診療報酬改定で導入された「病棟薬剤業務実施加算」を受け、同院薬剤科でも14年に病棟業務を開始して以来、病棟で多くの薬学的介入を行ってきたが、薬剤師による個々の薬学的介入を医療経済的に評価した報告は少ないのが現状。そこで、同院薬剤科では、病棟薬剤業務導入後に実施した薬学的介入の分析と医療経済効果を推算した。

対象は、14年10月から昨年12月までの約3年間。病棟薬剤業務の薬学的介入を記録したファイルから抽出し、先行研究の報告に基づき薬学的介入を分類した上で、医療経済的効果を算出した。

薬学的介入の内容については、▽重大な副作用の回避または重篤化の回避▽経静脈的な抗菌薬療法への介入▽癌化学療法への介入▽薬物相互作用回避▽腎機能に応じた投与量推奨▽注射薬配合変化防止▽薬歴の聴取(抗血小板薬等の術前中止薬の確認等を含む)▽その他の薬剤処方提案▽モニタリング(検査)推奨▽スタッフへの医薬品情報提供▽他職種とのラウンド▽副作用報告――の12種類に分類。その上で、先行研究に基づき、これら病棟業務における薬学的介入の医療経済効果を推算した。

その結果、最も医療費削減額が大きかったのが、通常医薬品の薬剤処方提案の65件で、医療経済効果は364万円に上った。次いで癌化学療法への介入が14件で156万8000円、通常医薬品の腎機能に応じた投与量推奨が14件で78万4000円、経静脈的な抗菌薬療法への介入が3件で48万円、通常医薬品の薬歴の聴取が8件で44万8000円となった。

さらに、ハイリスク医薬品の腎機能に応じた投与量推奨が3件で25万2000円、通常医薬品の薬物相互作用回避が4件で22万4000円、通常医薬品の注射薬配合変化防止が3件で16万8000円、ハイリスク医薬品の薬歴の聴取が2件で16万8000円などとなり、合計で薬学的介入は168件行われ、その医療経済効果は781万6000円に上った。

そのほか、直接的には処方変更に反映されない介入として、スタッフへの医薬品情報提供も45件と多く行われていた。

具体的な介入内容を見ると、癌化学療法への介入では処方漏れの確認が最も多く、次いで支持療法提案、投与量提案と続いた。腎機能に応じた投与量推奨では「」が最も多く、次いで「」「メトホルミン」となった。その他の薬剤処方提案では、副作用対策、不要薬の中止、処方漏れに対する介入、患者の症状に対する処方提案が多く行われていた。

これらの薬学的介入により得られる医療経済効果は3年間で約800万円と推算され、薬剤師が医療経済的に大きく貢献していることが分かった。

その他の薬剤処方提案には、副作用対策や患者の症状に応じた提案が含まれており、病棟業務において積極的な薬学的介入が行われていることが明らかになった。

同院薬剤科は、薬学的介入を記録したファイルへの記載漏れも考えられるとし、実際にはより多くの薬学的介入を行っている可能性を指摘。「今後はプレアボイド優良事例の情報共有を行うなど、これまで以上に薬学的介入を行っていきたい」としている。

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