CRSがインフルエンザ様症状を誘発、死亡に至ることも
中外製薬株式会社は5月29日、ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体「アクテムラ(R)点滴静注用80mg、同200mg、同400mg」(一般名:トシリズマブ(遺伝子組換え))について、「キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞輸注療法に伴うサイトカイン放出症候群」に対する効能・効果追加の承認申請を厚生労働省に行ったと発表した。
サイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome: CRS)は、過剰な免疫反応にともない細胞から多量のサイトカインが放出され、血中のサイトカイン濃度が高度に上昇することを原因として引き起こされる。CRSは、キメラ抗原受容体遺伝子導入T(CAR-T)細胞輸注療法下で比較的多く見られる副作用の一つで、多くの患者で軽度ないし中等度のインフルエンザ様症状(発熱、悪心・悪寒、筋肉痛等)を呈する。しかし、一部の患者では重度の低血圧、頻脈、呼吸困難などが誘発され症状が急激に進展し、死亡に至ることがある。
国際共同P2試験の成績に基づきCRS治療薬として承認申請
CRSの治療は、初期治療として個々の徴候・症状への対症療法、またはコルチコステロイドや抗ヒスタミン薬の静脈内投与による、過剰な炎症反応の抑制が行われる。しかし、重症度が高い場合には、発症原因である血中サイトカイン濃度の過度な上昇を抑制するため、抗サイトカイン療法による治療が行われている。
今回の申請は、ノバルティス社が実施したCAR-T細胞医療の有効性および安全性を検討した、P2国際共同治験等の成績に基づいている。中外製薬は、アクテムラを「キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞輸注療法に伴うサイトカイン放出症候群」に対する治療薬として一日も早く患者に届けるため、承認取得に向けて取り組んでいきたいとしている。
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・中外製薬株式会社 ニュースリリース