清水氏は、「登録された医師が登録された医療機関で、リスト化された診療行為によって、承認された医療用医薬品の処方を行い、調剤薬局が調剤するため、本来はデータが集めやすい」と海外に比べても優位な環境にあると指摘。その一方で、製薬企業が活用している医療情報を見ると、民間企業が運営する医療DBが中心となっており、海外に比べ「整備が進んでいない」と述べた。
民間企業が提供するDBでは、調剤薬局のレセプトDBや、健康組合に加入する組合員の受診記録を集積したDB、DPC病院の医事会計データやカルテ情報を集めたDBが存在するが、それぞれカバーしている医療情報の範囲に長所・短所がある。これらのDBを統合し、ビッグデータとして解析することは難しく、「2次利用に限界がある」とした。国も2016年11月に、特定健診等のレセプト情報を集積したナショナルデータベースの提供を開始しているものの、「行政機関や都道府県、大学などに限られ、現段階では製薬企業など民間への解放が実現していない」との課題を挙げた。
その上で、「日本は医療データの活用で技術的には最先端を走っているのに、国や行政によるグランドデザインがなく、地方に丸投げしている。医療従事者や製薬企業、医療機器メーカー、患者やその家族といったステークホルダーも同床異夢で、話が進まない」とし、RWDの情報を相互活用できる共通基盤の設計と構築に加え、医療情報の提供に抵抗感を示す患者やその家族の理解促進に向けた環境づくりや法整備を訴えた。
一方、上市医薬品の安全性監視などでRWDの活用を検討する製薬企業に対しては、「RWDで何が分かるかという相談を受けるが、“何を知りたいか”が原点になる」と述べ、企業の意識の遅れにも言及。日本で扱える医療DBが増えた場合でも、「研究の目的からどんなデータを買えばいいのか、研究の進め方などは企業が考えなければならない」と語った。