TDMの診療報酬算定可能な分子標的抗がん薬として認められたのは、12年度のイマチニブが初めて。18年度は、関連学会が申請した3剤のうち「評価すべき医学的な有用性が示されている」としてスニチニブのみが算定対象薬として認められた。アキシチニブ、パゾパニブは「評価すべき医学的な有用性が十分に示されていない」として認められなかったため、エビデンスを充実させて次回再申請する計画になっている。
腎がん領域だけでなく、血液がん領域で使用されるニロチニブ、ダサチニブ、ポナチニブ、肺がん領域で使用されるエルロチニブやアファチニブもTDMの有用性が確認されている。多施設共同臨床試験が実施されるなどエビデンス構築が進んでおり、将来の診療報酬算定が待たれるところだ。
診療報酬獲得に当たって三浦氏は「TDMの有用性を複数施設が報告することが大事」と強調。多くの施設がエビデンス構築に取り組むよう求めた。
TDMの有用性が認められるには、複数施設の臨床研究で同様の結果が得られる必要があるとし、施設間で数値がばらつかないように十分な精度管理を行うよう要請。「PK/PD論文は貴重な情報となるため、できるだけ真の値に近い値で論文を書けるようにしてほしい」と呼びかけた。
分子標的抗がん薬のTDMを実施し、治療有効域内に血中濃度を維持することによって「より早い寛解や治療の継続につながる」と三浦氏は語った。TDMを実施せず、血中濃度が低いままだと十分な治療効果が得られないため、治療には時間がかかり、費用も膨らむ。
一方、血中濃度が高いままだと副作用が出現し、治療の中断や中止に至るため、その間にがんが進行してしまう。
TDMで最適な血中濃度をコントロールすることによって、[1]治療開始から一定期間経過後の寛解達成率が高くなる[2]寛解達成までの時間が短くなる[3]逸脱率が低下する――など「時間軸を意識して有用性を示すことが重要」と三浦氏は指摘。TDMの実施が、効率の良い医療や医療費の抑制につながることを示す必要があるとした。