2015年には世界各国で5歳未満の小児3300万人以上が罹患
東北大学は5月25日、急性呼吸器感染症の原因ウイルスであるRSウイルスの再感染に関与したウイルスの特徴的な変化を報告した。同研究は、同大医学系研究科微生物学分野の押谷仁教授と岡本道子助教らのグループによるもの。研究成果は「The Journal of Infectious Diseases」に掲載された。
画像はリリースより
RSウイルスは、小児における細気管支炎や肺炎などの急性下気道感染症の原因として最も重要なウイルス。2歳までにほとんどの小児が感染するが、とくに6か月未満の乳児や心肺に疾患がある小児・早産児が感染すると症状が重篤となり、入院治療が必要となる場合もある。2015年のデータでは、世界各国で5歳未満の小児の3300万人以上が罹患し、入院を要した320万の中で約6万人が死亡に至ったと推定されている。
RSウイルスは、一度の感染では免疫が十分に獲得できず再感染することが知られているが、RSウイルスに対するワクチンはまだ実用化されていない。RSウイルスは、サブグルーブAとBに分類され、ウイルスの抗原性にFタンパクとGタンパクの2つのタンパク質が関与するとされるが、ウイルスの抗原変異が再感染に関与しているかどうかは不明だった。
アミノ酸置換によってウイルスの抗原性が変化
研究グループは、フィリピンの5歳未満の約1,800名の小児の急性呼吸器感染症の追跡調査において、RSウイルスによる再感染の症例から検出されたウイルスの遺伝子配列を解析。再感染が認められた25名のうち4名が同じサブグルーブBに2回感染していたことから、それら4名から検出されたウイルスの遺伝子を解析した結果、最初の感染と2回目の感染で検出されたウイルスでは、FタンパクとGタンパクの特定の部位のアミノ酸が置換していることが明らかになったという。このアミノ酸の置換によってウイルスの抗原性が変化し、最初の感染による免疫が十分に機能しなかった可能性が再感染の原因のひとつとして考えられるという。
今回の研究結果は、RSウイルスの再感染のメカニズムに対して新しい知見を与える重要な報告となるもの。研究で検出されたRSウイルスのFタンパクのアミノ酸置換部位は、ワクチンや抗ウイルス製剤の開発で現在最も注目されている部位であり、ウイルスの抗原性の変化はそれらの効果に影響を及ぼす可能性がある、と研究グループは述べている。
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