■薬価制度の是正に意欲
日本製薬団体連合会(日薬連)は24日に開いた評議員会で、任期満了に伴う役員改選を行い、新会長に手代木功氏(塩野義製薬社長)を選出した。また、創立50周年を迎えた日本製薬工業協会(製薬協)も同日の総会で、新会長に中山讓治氏(第一三共会長)を選出した。いずれも任期は2年。両会長とも、4月に実施された薬価制度の抜本改革について、「イノベーションを阻害する結果となる」と厳しく批判。毎年薬価改定や費用対効果評価の導入をめぐる議論も進み、製薬業界に不透明感が漂う中、製薬団体トップとして舵取り役を担う。
手代木氏は、就任のあいさつで、「医薬品全体を俯瞰し、業界の代表として政府や行政機関、関係団体に業界の意見・要望を申し上げ、その実現を図っていくことが引き続きわれわれに課せられた責務」と述べ、税制や薬価制度、医薬品医療機器法見直しなど諸課題の解決に向けた政策提言を行っていく考えを示した。
特に4月に実施された薬価制度の抜本改革を問題視。「イノベーションの評価がないがしろにされ、財政的議論の的となっている現状を、われわれがなんとか打破しないといけない」と是正を訴えた。医療費削減ありきの議論から脱却するためには、イノベーションが持つ価値や、支払われるコストが社会的に理解される環境づくりが欠かせないとし、「これらを少しずつ達成することが日本の医薬品業界全体の底上げにつながる」と述べ、国民的視点からイノベーションを適切に評価する仕組みの構築に取り組む方針を示した。
中山氏も、製薬協創立50周年記念講演会後の懇親会であいさつし、創立50周年の節目の会長就任に「日本の医薬品輸出額が50年前の約180億円から20年前で3000億円、現在は3兆円超の水準になっている」とし、「製薬企業は不況時にも高い税額を政府に納め、日本の経済成長の一翼を担う強い産業の一角に成長した」とこれまでの業界の歩みを評価した。
一方で、薬価制度の抜本改革については「イノベーションへの投資にブレーキがかかる極めて厳しい結果となった。私の感覚では一線を超えてしまったと思っている」と厳しく批判。「日本の未来に製薬企業が貢献していくためにも、この制度を大きく見直していただけるよう声を上げる」と所信表明した。
副会長人事では、日薬連が中山讓治氏、樋口達夫氏(大塚製薬社長)、前川重信氏(日本新薬社長)、製薬協が内藤晴夫氏(エーザイCEO)、畑中好彦氏(アステラス製薬会長)、手代木功氏、多田正世氏(大日本住友製薬会長)、岩崎真人氏(武田薬品ジャパンビジネスユニットプレジデント)、三津家正之氏(田辺三菱製薬社長)を選任した。
武田薬品の岩崎氏については、会員会社代表を前任のクリストフ・ウェバー社長から岩崎氏に変更する申し入れがあったとしている。また、日薬連理事長には、元内閣官房社会保障改革担当室長の宮島俊彦氏が新たに選任された。