新生児死亡の20%を占める先天性心臓病
近畿大学は5月23日、同大医学部附属病院小児科にて、胎児エコーの遠隔診断で、出生前に先天性心臓病のひとつの重複大動脈弓を遠隔診断で2症連続して発見し、発症前のリスクが低い段階で根治手術に成功したと発表した。
画像はリリースより
先天性心臓病には、出生後に重症化するものがあり、新生児死亡の20%を占めている。一方、生まれる前に診断することで致命的な病状が回避できることも明らかになってきている。近年、先天性心臓病の出生前診断は進歩しているが、すべての産科医が先天性心臓病の出生前診断を行うことは難しいのが現状だ。
妊娠28・30週目の胎児2人の心臓を遠隔で画像解析
近畿大学医学部附属病院小児科は、2016年より胎児心エコー診断装置を活用し、近隣の産科医院5施設とネット回線を通して胎児心臓病の早期発見のための遠隔診断を500件以上行ってきた。これは、妊婦がかかりつけの産院から移動することなく、同院の専門医の診断を受けることができるシステムだ。
今回、近隣の提携病院より、妊娠28週目と30週目の胎児2人の心臓診断の依頼を受けた。遠隔で画像を解析したところ、両児とも重複大動脈弓であることを発見。その後、妊婦は同院の小児科胎児心臓病外来を受診し、重複大動脈弓についての説明を受けた。結果、両児とも同院産婦人科で無事出生し、慎重な経過観察の後、生後3週間で根治手術に成功。術後のCTでは気管の圧迫はなくなり、両児とも元気に退院したという。
今回の重複大動脈弓は、心臓の外側である大血管の異常であり、さらに診断が難しい領域にあった。正常な新生児は生後1か月間の成長は著しいことから、この間に進行する恐れがあると予測。生後3週間で手術することを決定したという。今回の症例は、このことを出生前に十分説明し、患者の同意を得て症状が出現する前に手術を行うことができたため、気管を治す手術は不要となり、血管を切断するだけで完治することが可能となったとしている。
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