■富山県が新設、産業振興狙う
富山県は、バイオ医薬品など付加価値の高い医薬品の開発・製造を目指し、今年4月にこれまでの「薬事研究所」を「薬事総合研究開発センター」に改組し、同センターのもとに創薬研究開発センターと製剤開発支援センターを設置した。
創薬研究開発センターの構造は、鉄骨造りの2階建て、延べ床面積1300m2で、薬事総合研究開発センターと2階渡り廊下でつながっている。
1階には、成分の精密質量を分析し、物質を推定する「液体クロマトグラフ飛行時間型質量分析計」をはじめ、25種類の高度な分析機器等を設置。センターの研究員だけでなく、県内の企業や大学も製品開発や品質管理に活用できるようにした。
2階部分には、セミナーや研修会が開ける会議室や相談室を設置した。整備費9億4000万円のうち、半分を国の地方創生拠点整備交付金を活用した。
開所式で富山県の石井隆一知事は、10年前に1800億円台にとどまっていた医薬品生産額が、15年に7300億円台にまで伸び、都道府県別で全国1位に躍進したことを強調。「今後、富山県の医薬品産業がさらに飛躍するためには、バイオ医薬など、新たな成長分野に参入する必要がある」とし、「そのためには技術力のさらなる向上、それを担う専門人材の育成、多額の資金などが必要になる」と指摘した。
資金面については、国の「地方創生拠点整備交付金」の対象に選ばれたことで、創薬研究開発センターの整備に補助金を充てることができたとし、「引き続き、内閣官房、厚生労働省の力添えをいただき、“くすりのシリコンバレー富山”の構想が現実のものとなるよう頑張っていきたい」と医薬品産業の振興を誓った。
薬事総合研究開発センターの高津所長は、今年8月に、医薬品分野の産学官連携プログラムに基づいて、富山大学と富山県立大学が医薬品をテーマに首都圏の大学生を受け入れるサマースクールを開催することや、製剤実習と分析実習を行う際に薬事総合研究開発センターの活用を予定していることを明らかにした上で、「こうした活動を通じて医薬品関連分野の技術力向上、人材育成に尽力したい」と意気込みを示した。
来賓として出席した厚労省医政局の三浦明経済課長は、「世界の創薬環境を見ると、バイオ医薬品の占める割合が多くなってきている」との認識を示し、「将来を見据え、バイオ医薬品の研究開発支援や人材育成に取り組むことは、くすりの富山としての位置づけをさらに盤石にするもの」と期待感を示した。