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自己免疫性関節炎の原因に繋がる新たな細胞群と炎症メカニズムを発見-阪大

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2018年05月25日 PM12:00

TNF阻害剤などの使用でも、約30%が治療効果得られず

大阪大学は5月23日、関節リウマチの臨床検体とそのマウスモデルを用いて、自己免疫性関節炎を引き起こす炎症性T細胞が、関節炎の発症および慢性化維持に関わっているという、新たな仕組みを明らかにする研究結果を発表した。この研究は、同大免疫学フロンティア研究センターの廣田圭司招へい准教授(兼京都大学ウイルス・再生医科学研究所准教授)が、坂口志文特任教授(常勤)らの研究グループと、京都大学医学部附属病院リウマチセンター、スイス・チューリッヒ工科大学、英国フランシス・クリック研究所、英国エジンバラ大学と共同で行ったもの。研究成果は、米科学誌「Immunity」のオンライン版で公開されている。


画像はリリースより

関節リウマチは、関節の腫脹を特徴とする全身性の炎症性疾患で、日本で約70万人の患者がいるとされており、1年に1万人以上が新たに発症している。関節炎が起きた箇所にはさまざまな免疫細胞が集まり、正常なコントロールを失った炎症性の免疫細胞および滑膜細胞によって関節が破壊される。最近、TNF阻害剤などの新しい抗リウマチ薬の登場によって、関節リウマチ患者の治療効果は大きく改善してきたものの、30%の関節リウマチ患者はこれらの治療に対する効果が低く、新しい免疫治療法の開発が待たれている。

炎症ネットワークを標的とした新しい免疫療法開発に期待

研究グループは、関節炎が起きた箇所の細胞群と炎症性サイトカインが新しい免疫治療法の標的となりうることに着目。自己免疫性関節炎を引き起こす炎症性T細胞との細胞間の、および炎症性サイトカインとの炎症ネットワークを形成する因子を探索した。

その結果、関節炎発症や増悪に関わり、炎症滑膜組織に存在するGM-CSF(顆粒球単球コロニー刺激因子)産生自然リンパ球を新たに発見。また、インターロイキン-17(IL-17)を産生する炎症性T細胞(Th17)が関節炎発症期、慢性炎症期に、他の炎症性細胞と炎症性ネットワークを形成することで、関節炎を増悪させる仕組みを明らかにしたという。

現在の抗リウマチ薬は炎症を抑制する対症療法で、継続的な薬剤投与が必要である。しかし、関節リウマチの病態の中心はコントロールを失った炎症性の免疫細胞であり、これらの細胞を正常化するための免疫療法の開発は、疾患の根治療法となる可能性がある。今回明らかにされた炎症ネットワークを標的とした新しい免疫療法開発は、現在の抗リウマチ薬に反応性が低い患者群に対する有効な治療法となり得るものとして、今後の研究に期待が寄せられている。(遠藤るりこ)

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