■予防医療への参画必要性も
日本製薬団体連合会の多田正世会長(大日本住友製薬会長)は、任期満了を前に薬事日報のインタビューに応じ、日本の市場環境について、「米国や中国を中心とした戦略を進める製薬企業が増えており、投資先としての魅力が低下している」と危機感を募らせた。中でも薬価制度の抜本改革で実施された新薬創出等加算品目の見直しは、「新薬開発の意欲を削ぐ」と強く批判。5年に1度行われる薬機法の見直しに対し、条件付き早期承認制度・先駆け審査指定制度を法制度化して革新的医薬品の創出を促すことなどを厚生労働省に求める要望書を提出し、「国の対応として高い視点、広い視点で薬価と産業政策を一体化した議論ができるようにしていただきたい」と訴えた。
多田氏は、武田薬品がアイルランドのシャイアーを約7兆円で買収するなど、日本の製薬企業を取り巻く事業環境の変化について、「医薬品を産業ではなくコストと考えるようになっている。日本や欧州では医薬品の価格を国がコントロールしているが、一方で米国では自社で値付けできるため、経営の自由度が高く、米国を中心に事業展開を進める動きが強くなっている。シャイアーの売上全体の約6割を米国市場が占めていることを考えると、マーケットの地合が買収の背景にあるのではないか」との見方を示す。製薬企業がグローバルで事業活動を行う上で、国や地域を選別する時代を迎える中、新薬開発で規制緩和を進める中国が台頭しつつあり、「日本市場の魅力が低下している。日本市場に依存する企業も多く、各社悩んでいる」と述べた。