厚生労働省は、中外製薬の抗インフルエンザウイルス薬「タミフル」について、10代患者に対する使用差し控えを解除する。16日の薬事・食品衛生審議会薬事分科会の医薬品等安全対策部会安全対策調査会に方針を示した。タミフル服用と異常行動について、明確な因果関係は不明とした調査結果を踏まえた対応で、注意喚起の記載を添付文書の「警告」から「重要な基本的注意」の項目に移す。厚労省はインフルエンザが流行シーズン入りする11月までに添付文書の改訂を要請したい考え。
タミフルをめぐっては、2007年に服用した中学生の転落死などが相次いで報告されたことから、添付文書の警告の項で10代患者の使用を原則として差し控えることを求め、服用後の異常行動に対する注意を促している。ただ、同じ抗インフルエンザ薬のリレンザ、イナビル、ラピアクタの3品目では10代の使用を制限しておらず、重要な基本的注意の項で異常行動の注意喚起を行っている。
この日の会合では、安全対策調査会が09年以降に行ったタミフルと異常行動の関係についての調査結果を公表した。タミフルの服用の有無にかかわらず、インフルエンザ罹患時に異常行動が発現する可能性があること、10歳未満でも服用後の異常行動が見られたことなどを報告。これまで同様「タミフルと異常行動の因果関係に明確な結論を出すことは困難」とした。
これら調査結果を踏まえ、タミフルの10代への使用差し控えを継続すべきかについて検討した。委員からは「タミフルだけ一段上にしておくと、他の抗インフルエンザ薬は安全と思われるので、ある程度統一性を持たせてもよい」「全ての抗インフルエンザ薬を同列に扱うべき」などの意見が出たことから、10代の使用差し控えを解除すべきと結論づけた。
また、異常行動に対する注意喚起の記載に関して、「調査結果から、注意喚起を警告から重要な基本的注意の項に移すことには整合性がある」などの意見を踏まえ、警告の項から注意喚起の記載を削除した上で、他の抗インフルエンザ薬と同様に重要な基本的注意の項に記載することとした。
次回の調査会でも議論した上で、厚労省はインフルエンザ流行シーズンに入る11月までにタミフルの添付文書改訂を製造販売業者に要請したい考えだ。