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【岐阜県薬、岐阜薬大が共同研究】重複投薬・相互作用等防止加算、調剤報酬を数倍上回る経済効果

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2018年05月21日 AM10:00


■岐阜県薬、岐阜薬大が共同研究

・相互作用等防止加算の算定要件を満たす1件当たりの薬剤費削減額は1075円に達することが、岐阜県薬剤師会と岐阜薬科大学実践社会薬学研究室との共同研究によって明らかになった。調査した2016年度における同加算の調剤報酬は30点(300円)。国から見れば、それだけの費用を薬局に支払っても、それを数倍上回る薬剤費削減効果を得たことになる。岐阜県薬が会員から幅広く収集している事例を解析することで、薬剤師の職能を客観的な数値で“見える化”できた。この数値をもとに全国1年間の同加算による薬剤費削減額を推計すると約36億円になるという。

岐阜県薬は岐阜薬大と連携して、会員の薬局薬剤師を対象に調剤やOTC薬販売などの場面で、薬剤師の介入によって処方変更や副作用回避などが図られた事例を収集する「Pharmaceutical Intervention Record」(薬学的介入報告、PIR)事業を14年12月から開始。今回は16年4月から17年3月に収集した報告のうち、調剤における疑義照会事例を対象に解析を実施した。

同期間の1年間に67薬局から処方箋1161枚分の対象データを収集した。このうち重複投薬・相互作用等防止加算を算定した365症例と、要件を満たすが算定しなかった85症例の計450症例を加算群に設定した。

疑義照会前後の薬剤費を比較したところ、疑義照会前に比べて疑義照会後は1症例当たり平均1075円の薬剤費が削減されていた。疑義照会の結果、薬剤の中止に至った症例の割合が最も高かった。

一方、要件を満たさずに加算しなかった707症例と処方箋そのものが中止となった4症例の計711症例を非加算群に設定し、解析したところ、疑義照会前と比較した疑義照会後の薬剤費削減額は1症例当たり平均206円だった。

お薬手帳を活用した処方監査の場合には、薬剤費削減効果はさらに高いことも明らかになった。全症例を、疑義照会を行う契機となった情報源にお薬手帳が含まれる群と、お薬手帳は含まず処方箋や薬歴が含まれる群に分類。その上で、同加算の算定要件を満たした場合に限定し、疑義照会前後の1症例平均薬剤費削減額を算出すると、お薬手帳群(101症例)は1502円、処方箋・薬歴群(175症例)は645円だった。お薬手帳群の薬剤費削減額が大きかった。

お薬手帳を活用した処方監査では重複処方が検出される割合が高く、疑義照会によって薬剤中止となる場合が多いため大幅に削減できたと見ている。かかりつけ薬剤師の普及によって服薬情報の一元管理が進めば、医薬品の適正使用がさらに進むと期待できるという。

PIR事業は、会員薬局から介入症例ごとに、▽報告者の基本情報▽患者の年齢や性別▽疑義照会を行う契機となった情報源▽疑義照会の原因▽疑義照会の結果▽疑義照会前後の処方薬、用法、用量▽重複投薬等防止加算の算定状況――などの情報を収集するもの。岐阜県薬のウェブサイトでフォーマットに沿って入力してもらう。蓄積したデータを解析することで、評価しづらい薬局薬剤師の対人業務の重要性を、客観的な数値で“見える化”できる。

今春の調剤報酬改定では地域支援体制加算が新設された。その算定要件の一つとして「医療安全に資する体制・取組実績」が求められ、プレアボイド事例報告の取り組みが示されているが、PIR事業もそれと同等のものと行政側から見なされているという。自主的な取り組みが調剤報酬要件に反映されるまでになったことを励みに、岐阜県薬はさらにPIR事業を推進したい考えだ。

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