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安全性・汎用性の高い新たな「多色発光基盤技術」を開発-産総研と慶大

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2018年05月21日 AM11:45

発光基質技術と発光酵素技術を組み合わせて生物発光技術を開発

産業技術総合研究所と慶應義塾大学は5月16日、蛍光色素付き発光基質類を開発し、生物発光の多色化を実現したと発表した。この研究は、産総研環境管理研究部門環境微生物研究グループの金誠培主任研究員と、慶應義塾大学理工学部応用化学科の鈴木孝治名誉教授、チッテリオ・ダニエル教授、同大学大学院理工学研究科博士課程の西原諒氏(2017年9月修了)らが共同で行ったもの。この研究成果は、米国化学会の学術誌「Bioconjugate Chemistry」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより

生物発光とは、ホタルやウミシイタケ(海洋性生物)などの生体内の生物発光酵素(光を放つ化学反応を触媒する生物由来の酵素)が、生物発光基質と特異的な触媒反応をし、基質が貯めている化学エネルギーを光として放つ現象。生物発光は、一般に生体に無害であり、複雑な検出器が必要でないので、さまざまなバイオアッセイでの発光標識として用いられている。生物発光は蛍光に比べてバックグランド信号が低く、高感度な発光標識であるが、発光そのものは弱く、発光色も限られている。これらを克服した発光技術ができれば、より高性能なバイオアッセイ系の開発にも繋がり、基礎医学から産業応用まで波及効果が大きい。

慶大は、多様な化学構造の発光基質を世界に先駆けて開発してきた。また、産総研は人工生物発光酵素((R))群に関する独自の研究分野を開拓してきた。生物発光は、「発光基質」と「発光酵素」間の触媒反応により生じることから、慶大の発光基質技術と産総研の発光酵素技術を組み合わせて、新たな生物発光技術の開発を行うことが決まった。

高感度診断薬の開発や、がんの早期診断への応用にも期待

研究グループは、天然の生物発光基質(、nCZT)にさまざまな蛍光色素を導入して一連の蛍光色素付き発光基質をシステム的に開発。これらを産総研独自の人工生物発光酵素群(ALuc)やウミシイタケ生物発光酵素(RLuc)と反応させて、青色から赤色まで多彩な発光色を得ることに成功した。

この色の変化は、発光基質のエネルギーが蛍光色素に移動する現象(化学発光/生物発光共鳴エネルギー移動現象())によるもの。開発した発光基質の一部は発光酵素と選択的に発光するため、複雑な化学物質が共存する系でも特定の発光酵素だけを発光させることができる。また、蛍光色素導入の合成中間体であるアジド基付き発光基質は、極めて高輝度の緑色発光を酵素選択的に放つことも見出したという。

これらの成果は、高感度診断試薬の開発、がんの早期診断、各種バイオアッセイ、生体イメージングなどに広く利用できると期待される。

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