■「地域限定」案には異論
厚生労働省は15日、インターネットなどの情報通信機器を用いたオンライン服薬指導に対する見解を、政府の規制改革推進会議「医療・介護ワーキンググループ」に示した。オンライン服薬指導について、国家戦略特区での実証実験の結果を待たずに、薬機法の改正に向けて必要な議論を進める前向きな考えを示した。ただ、厚労省案はオンライン服薬指導の対象となる患者の居住地域を「医療資源の乏しい地域」に限定していることから、委員からは反対意見が続出した。
この日の会合では、先月20日に規制改革推進会議が示したオンライン服薬指導に関する意見書に対して厚労省が見解を公表した。
同会議の意見書では、オンライン服薬指導と処方箋の完全電子化を実現し、移動が難しく必要に迫られている患者が診療から医薬品の受け取りまで一貫してオンラインで完結できる在宅医療を受けられる仕組みを構築すべきとの提言を行っていた。
これに対し、今回厚労省が示した見解では、対面による服薬指導を原則としつつ、ICT技術の活用も重要との考えを提示。これらICT技術の活用の検討は、特区におけるオンライン服薬指導の実証実験を並行して進め、現在進められている薬機法の見直し議論にオンライン服薬指導の導入も含めていく考えを示した。
ただ、オンライン服薬指導と訪問服薬指導の組み合わせができるよう早急に制度を見直すべきと前向きな姿勢を示しているものの、対象患者の居住地域を「医療資源の乏しい地域」に限定した案となっていることから、委員からは「オンライン診療・訪問診療を受けている人たちも対象にすることが意見書の根底にある。医療資源が乏しい地域だけを対象にすることは意見書と趣旨が異なる」「医療資源が乏しくない地域であっても薬局へのアクセスが困難なことは同じ」などと、対象を限定してオンライン服薬指導を認めることに反対する指摘が相次いだ。
また、委員が「来年度に薬機法が改正される場合、国家戦略特区での実証実験の結果を踏まえることが前提なのか」と質したのに対して、厚労省は「結果が完全に出ることは前提ではなく、並行して行うとしている。結果が完全に出るまでは法改正をはじめとした制度改正に踏み込まないわけではない」と回答した。
一方、今回の見解に処方箋の完全電子化が含まれていないことについては、「完全電子化の方向性は意見書の通り。実証実験を今年度に行いたい」と前向きな考えを示した。