18年3月期決算会見でウェバー社長が見通し語る
先ごろアイルランドの製薬企業・シャイアーを総額約6兆8000億円で買収することを発表した武田薬品株式会社のクリストフ・ウェバー社長は5月14日、2018年3月期決算説明会で同社の筆頭製品となっている潰瘍性大腸炎(UC)の生物学的製剤「エンティビオ」(一般名:ベドリズマブ、日本国内では承認申請中)について「2019年度には全世界での売上高は30億ドル(約3300億円)規模になる」との見通しを明らかにした。18年3月期のエンティビオの全世界での売上高は前期比40.6%増の2014億円。米国で前期比34.1%増の1336億円、欧州で前期比52.3%増の602億円となり、大きく業績をけん引した。
会見に臨むウェバー社長(左から2人目)ら
2019年度の30億ドル達成は、日本では潰瘍性大腸炎で承認申請中、クローン病(CD)でフェーズ3、中国では潰瘍性大腸炎、クローン病ともにフェーズ3、皮下注射製剤として潰瘍性大腸炎、クローン病ともに日米欧でフェーズ3であるなど、後期開発段階にあることを念頭に置いたものと思われる。
一方、こうしたエンティビオの伸長もあり、2018年3月期全体では売上高1兆7705億3100万円(前期比2.2%増)、営業利益2417億8900万円(同55.1%増)、当期純利益1867億800万円(同61.6%)の増収増益だった。
エンティビオ以外で増収傾向にある製品は、現在米国のみで販売しているうつ病治療薬のトリンテリックスが484億円(同51.6%増)、多発性骨髄腫治療薬のニンラーロが464億円(同58.1%増)。一方、エンティビオの好調以前に業績を支えてきた多発性骨髄腫治療薬のベルケイドは2017年末に米国で特許が失効したことで減収傾向に入り、1373億円(同0.2%減)だった。ベルケイドの今後の見通しについてウェバー社長は「今年度は50%減、600~700億円の減収となる」と説明したものの、エンティビオや後継のニンラーロの伸長などでこうした減収分はカバーできるとの認識を示した。
国内の医療用医薬品売上高、地域別セグメントで唯一の減収
日本国内の医療用医薬品売上高については、ファイザーとの肺炎球菌ワクチンのプレベナー、血友病B治療薬のベネフィクスの販売提携終了の影響を受け、前期比0.2%減の5014億円。地域別セグメントでは唯一の減収地域となった。国内の製品別売上高ではトップが降圧薬のアジルバの730億円(同9.1%増)、続いて酸関連疾患治療薬のタケキャブが551億円(同61.6%増)。タケキャブについては逆流性食道炎、低用量アスピリン投与時の胃潰瘍再発抑制の適応で大きく伸長したことが増収につながった。