治療の目的 医師の86%「説明した」患者の39%「説明を受けた」
日本ベーリンガーインゲルハイムは5月17日、愛媛大学の檜垣實男名誉教授と共同で行った「医師および高血圧患者の高血圧治療に対する意識の実態調査」の調査結果を公表。診断や治療に関して、「説明した」医師と「説明を受けた覚えがない」患者のギャップが大きいことが明らかになった。調査研究結果は雑誌「血圧」2018年5月号にも掲載されている。
調査の対象となったのは、高血圧治療を行う医師321人と高血圧患者1,000人。調査結果によると、コミュニケーションギャップは初診時から発生している。高血圧治療の目的を初診時に「説明した」と医師の86%が回答したのに対し、「説明された」とした患者は半数以下の39%にとどまった。他にも、食事療法の説明は医師「説明した」68%、患者「説明された」28%、運動療法の説明は医師「説明した」47%、患者「説明された」22%、薬物療法の説明は医師「説明した」57%、患者「説明された」34%、と軒並み患者の約半数が説明を受けた覚えがないと回答。さらに患者の15%は「何を説明されたか覚えていない」、8%は「説明を受けていない」と回答した。こうしたコミュニケーションギャップについて檜垣氏を含む著者らは「説明時間の短さ、説明方法の不十分さ、コミュニケーション技術の未熟さに加え、患者は初診時では病気のことが一番心配で、医師の言うことをすべて理解しきれていない可能性がある」と考察する。
「残っていないと不安」患者が意図的に残薬を発生させるケースも
残薬について、患者の58%が「余っている」と回答。多くが「うっかり飲み忘れた」「外出時に忘れた」などの「飲み忘れ」が理由だったが、「余っている」と回答した患者の20%が「残っていないと不安になる」と回答した。また、「病態が安定していたため自分で判断して飲むのをやめた」のは5%にとどまった。
患者に「良好な服薬アドヒアランスで服用できる降圧剤の薬剤数」について聞いたところ「2種類まで」34%、「1種類まで」33%とシンプルな治療を求めていることも分かった。
今回の調査結果について、檜垣氏は「高血圧患者さんと医師のコミュニケーションギャップを改善し、患者さんが高血圧治療の目的や治療選択肢について理解し、医師と共に治療に向き合える体制を作ることが大切です。今後高齢化が進む中で、残薬を減らし血圧をしっかりと管理していくことが、心血管イベント抑制や、医療経済的な貢献にも繋がると期待しています」とコメントした。