手引きの素案は、主に学童期までの小児でも急性気道感染症に焦点を当て、急性気道感染症の特徴と注意点、各論で構成。その中で、小児のかぜに対して使われやすく、気をつけるべき薬剤として、ST合剤、セフトリアキソン、マクロライド系抗菌薬、テトラサイクリン系抗菌薬、オセルタミビルなどを列挙。これら多くの対症療法薬にはエビデンスが存在せず、副作用も報告されているとし、使用に当たって添付文書の記載に注意が必要と促した。
各論では、クループ症候群や急性細気管支炎など小児に特有の急性気道感染症を盛り込み、特に診療所で多くの小児を診察する可能性が高いかぜについて、抗菌薬投与しないことを推奨した。また、抗菌薬の予防投与を行わないことも推奨している。
具体的には、鼻汁、鼻閉、発熱、軽い咳、呼吸障害がないなどの患者には抗菌薬は必要ないとしつつ、後鼻漏に伴う湿性咳嗽が10日以上長引く場合は化膿性副鼻腔炎を考慮すべきで、その場合はアモキシシリンを処方する治療が学会指針に示されていることなどを紹介した。
急性咽頭炎については、小児の急性咽頭炎の病原体のほとんどがウイルスで、細菌ではA群β溶血性連鎖球菌が重要であるとし、咽頭炎の原因がA群β溶血性連鎖球菌による感染症かどうかの診断が重要と指摘。急性咽頭炎の多くはウイルス性で抗菌薬の適応ではないとし、A群β溶血性連鎖球菌を除く急性咽頭炎に対しては抗菌薬を投与しないことを推奨した。
A群β溶血性連鎖球菌咽頭炎に対する第1選択抗菌薬としては、ペニシリン系抗菌薬が推奨されていることを示し、治療期間は10日間を推奨した。
主にウイルス感染症による咽頭の狭窄に伴う吸気性喘鳴、甲高い咳などを生じるクループ症候群については、数日から1週間程度で自然治癒するとしつつ、切迫した気道閉塞を来す急性喉頭蓋炎、細菌性気管炎、喉頭異物などの除外診断が重要と指摘。その上で、クループ症候群に対してもほとんどがウイルス性感染症であるとし、抗菌薬を投与しないことを推奨した。
急性気管支炎についても、その多くはウイルス性で自然軽快するとして、抗菌薬を投与しないことを推奨。さらに、小児に特徴的な急性細気管支炎については、2歳未満の小児で鼻汁、鼻閉などに引き続き咳、吸気性喘鳴などを呈するウイルス感染症であることを紹介。経過中に病状が進行する可能性や中耳炎、細菌性副鼻腔炎などの合併症を来す可能性から、状態の見極めが重要としながらも、抗菌薬を投与しないことを推奨した。