軽度認知障害の進行過程を追跡した「J-ADNI研究」より
東京大学大学院は5月10日、J-ADNI研究によりアルツハイマー病早期段階(軽度認知障害)の進行過程を解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科の岩坪威教授らの研究チームによるもの。研究成果は、米科学雑誌「Alzheimer’s & Dementia: The Journal of the Alzheimer’s Association」に掲載されている。
画像はリリースより
高齢化とともに日本で急増しているアルツハイマー病(AD)の根本治療薬開発は急務である。今後の予防・治療の対象として重要な軽度認知障害(MCI)などの早期段階を、画像診断やバイオマーカーを用いて精密に評価する Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)研究が米国で進み、日本でもJ-ADNI研究が推進されてきた。
MCIからADへの進行過程に、日米で極めて高い共通性
J-ADNI研究の主任研究者を務める岩坪教授らのチームは、今回J-ADNIの全結果を詳細に解析。研究では全国で総数537例、うちMCI234例が3年間にわたり追跡され、米国ADNIチームと共同でデータの比較解析が行われた。
その結果、アミロイドPET画像法などの最新技術によって診断された、ADを原因とするMCIについて、その症状や進行速度などの特徴が米国ADNIのMCIに極めて類似していることを明らかにしたという。
今回の研究により、MCIからADへの進行過程の自然経過に日本人と欧米人で高い共通性が示され、AD根本治療薬の治験においても、認知症期よりもまだ進行のスピードが遅いMCIなどの早期段階で、治療薬の効果を精密に評価できる技術が確立した。これにより国内のADの予防・治療薬開発を加速することが可能になったと研究チームは述べている。
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