■全ての会員薬局に資材を郵送
滋賀県薬剤師会は昨年6月から、薬局の健康サポート活動を強力に支援する事業を展開している。医師会などの関係団体と連携して毎月健康生活提案イベントを企画。薬局が取り組む健康サポートの具体的な行動を各月ごとに定め、啓発資材や手順書など必要なツールを毎月全会員薬局に郵送して、活用を促している。どこから着手すればいいのか分からない薬局でも、健康サポート活動に取り組みやすくなる仕掛けだ。初年度は啓発の意味合いも強いが、それでも毎月約3割弱の会員薬局が実際に取り組んでいる。今後も中期的に事業を続け、全ての薬局に健康サポート機能を定着させたい考えだ。
事業開始に当たって滋賀県薬は様々な関係団体に出向き、協働で取り組めることを話し合った。その上で毎月の健康生活提案イベントを企画した。12カ月のうち滋賀県薬の単独事業は半数弱。残りの過半数は「健診・検診に行こう」「フレイルってご存知ですか」「もの忘れ気になりませんか」など関連10団体との協働イベントだ(表)。連携に当たり滋賀県医師会、滋賀県歯科医師会とはそれぞれ「健康サポート連携体制の構築に関する協定」を締結した。
昨年7月には滋賀県歯科医師会と連携したイベント「生活習慣病と歯科受診のすすめ」を展開した。糖尿病と歯周病は関連して進行するため、糖尿病患者やその予備群は歯周病の治療にも目を向ける必要がある。薬局でこれらの対象者を把握し、薬剤師が声をかけて啓発活動を実施。歯科未受診者には歯科医療機関リストと歯科受診紹介カードを渡し、受診を勧奨した。
全薬局には毎月必要なツールを郵送し、取り組んだ結果をFAXで返送してもらっている。昨年7月のイベントには会員557薬局中149薬局(26.8%)からFAXで報告があった。集計したところ、生活習慣病と歯周病の関係を周知した人数は計2213人、歯科受診紹介カードを使用して受診勧奨をした人数は404人に達した。
全薬局分の資料を毎月作って印刷したり、郵送したりするのには多大な労力や多額の費用がかかる。それだけ滋賀県薬はこの事業を重視しているとも言える。滋賀県薬の大原整会長は「全ての薬局が健康サポート機能を備えた薬局になってほしいというのが目標。まずは、健康サポートとは何をすればいいのかを理解してもらう意味もあって事業を立ち上げた」と語る。少しでも関心を持ってもらえるように各薬局に送る資料には毎月、大原氏が手書きの激励文を添付している。
この事業に参加することで薬局は、健康サポート薬局の申請に必要な要件の一部を達成できる。▽地域における連携体制の構築とリストの作成▽関連団体等との連携および協力▽健康サポートに関する具体的な取り組みの実施――などの要件だ。
滋賀県薬の永井智宏常務理事は「これらの要件は個々の薬局では取り組みづらいもの。それを団体として支援するのもこの事業の目的の一つ」と強調。現在、滋賀県下の健康サポート薬局数は十数軒だが「健康サポート薬局になりたければなれる環境は整備できている」と話す。
今後も同様の事業を継続する計画だ。大原氏は「1年目は周知の年だと思う。当然、1年だけではダメなのでこれからも形を変えて発展させたい。2年、3年かけて健康サポート機能を全薬局が持つための支援をしたい。その結果、副産物として健康サポート薬局に認定される薬局も増えるだろう」と話す。永井氏も「事業を続けることで他団体や行政の理解も深まる。薬剤師にも、健康生活提案イベントをその月だけではなく通年で取り組む意識が生まれる」と期待を語る。
今年度も夏以降、健康生活提案イベントを展開する予定だ。それに加え、健康な人への周知を進めるために、健康推進アプリ「BIWA-TEKU(ビワテク)」の活用を構想している。このアプリは滋賀県下の各市町が主体的に運営するもの。利用者はスタンプラリーや歩数、各種健診の受診などによって健康ポイントを獲得できる。このアプリで毎月のイベントを紹介し、来局者には健康ポイントを配布することで、すそ野を広げる考えだ。