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武田薬品、シャイアー買収で会見「開発・技術主導型バイオ企業になる唯一のチャンス」

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2018年05月10日 PM02:00

総額約6兆8000億円、日本企業史上最大の買収劇

武田薬品工業株式会社のクリストフ・ウェバー社長は5月9日、同社東京本社でアイルランドのシャイアー社の買収について会見し、「武田にとって自社の戦略を加速させる意義のある重要な第一歩。開発主導型、技術主導型のバイオ医薬品企業になれる唯一のチャンス」とその意図を説明。買収に伴い法人税の低いアイルランドへの本社移転が将来的に行われるのではないかという予測を念頭に「これからも武田にとって日本が継続的な本社であり続ける」と強調した。


会見に臨むウェバー社長

今回の買収で武田薬品はシャイアー社の株式1株当たり現金30.33米ドルと武田が発行する新株式0.839株か、米国預託証券(ADS)1.678単位のいずれかを割り当てる。買収総額は英ポンドで460億ポンド、日本円換算で約6兆8000億円と、日本企業による買収としては2016年のソフトバンクによる英アーム・ホールディングス買収の約3兆3000億円を超え史上最大となる。また、買収完了後の武田薬品は、シャイアー社との売上高単純合算で製薬企業世界ランキングトップ10に入る日本初のメガファーマとなる見込みだ。

P3以降の新規有効成分開発品、4品目から2倍以上に

オンコロジー領域、消化器領域、中枢神経領域を重点領域とする武田薬品は、今回の買収で、消化器領域では既に欧米で認可を受け、自社の稼ぎ頭である潰瘍性大腸炎の生物学的製剤「エンティビオ」に、シャイアー社が保有する同疾患の基準薬である5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤のリアルダ、ペンタサを、中枢神経領域ではシャイアー社のADHD治療薬のビバンセ、インチュニブ、マイデースを手に入れることになる。

また、新たに希少疾患としてライソゾーム病、遺伝性血管性浮腫、血友病などの血液疾患の治療薬も製品群に追加される。ウェバー社長は「この希少疾患領域では多くのイノベーションが期待できる」と述べ、今回の買収で希少疾患が新たな重点領域に加わることで基本戦略がより拡大するとの認識を示した。

研究開発品目では、これまで武田薬品は、既存薬の適応拡大ではない新規有効成分のフェーズ3以降の後期開発品は4品目しかなかったが、シャイアー社を買収することで希少疾患を中心に一気に2倍以上へと拡大する。

財務状況悪化に懸念、有利子負債は6兆円超へ


武田薬品 東京本社

一方、今回はあまりに巨額な買収金額であるため、株式市場を中心に武田薬品の財務状況悪化に関する懸念が噴出している。

武田薬品側は同日の会見およびその前日の電話会議システム会見で最終的な有利子負債の総額は明らかにしていないが、今回の買収に伴うシャイアー株主への現金付与で新たに約3兆円の有利子負債を抱える見込み。両社の直近決算データから明らかになっている有利子負債合算額約3兆1000億円とあわせ、その総額は6兆円超になる見通しだ。

この点についてウェバー社長は、有利子負債を自社の営業キャッシュフローで返済する能力を示す純有利子負債/EBITDA比率が2017年上半期の同社実績2.0倍から短期的には4~5倍へと悪化することを明らかにした。しかし、ウェバー社長は「(買収後の)高い利益率により、これは急速に改善する」と語り、中期的には純有利子負債/EBITDA比率2倍に回復するとの見通しを示した。

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