αシヌクレニンの凝集沈着が特徴的な神経変性疾患
千葉大学は5月7日、パーキンソン病(PD)やレビー小体型認知症(DLB)の病因に、不飽和脂肪酸の代謝に関わる可溶性エポキシド加水分解酵素の異常が関与していることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大社会精神保健教育研究センターの橋本謙二教授、任乾特任助教らの研究グループによるもの。研究成果は「米国科学アカデミー紀要」に掲載されている。
PDやDLBは、タンパク質であるαシヌクレニンの凝集沈着が特徴的な神経変性疾患で、その病因は明らかにされていない。今回研究グループは、酵素阻害薬(TPPU)と遺伝子欠損マウスを用いて、これらの疾患の病因に可溶性エポキシド加水分解酵素が重要な役割を果たしていることを明らかにしたという。
TPPU投与でドパミン神経系の脱落を予防
TPPUの投与は、PDモデルマウスのドパミン神経系の脱落を予防。また、遺伝子欠損マウスは、PDモデルにおけるドパミン神経系の脱落を示さなかったとしている。また、PDのモデル動物およびDLB患者の死後脳を用いた研究から、可溶性エポキシド加水分解酵素のタンパク発現がモデル動物の脳組織やDLB患者の死後脳組織で増加していることがわかったという。この酵素の発現とαシヌクレニンのリン酸化の間に正の相関があり、αシヌクレニンのリン酸化の亢進と、この酵素の増加に関連があることが示唆された。さらに、家族性PD(PARKIN遺伝子変異)患者由来のiPS細胞から誘導したドパミン神経細胞に対してTPPUを培地中に添加することにより、ドパミン神経系の神経障害を予防し、正常細胞と同程度まで回復させたという。
可溶性エポキシド加水分解酵素は、アラキドン酸、EPA、DHAなどの不飽和脂肪酸の代謝系におけるエポキシ脂肪酸の加水分解に関わる重要な酵素であり、近年注目されている。神経変性疾患の脳では、可溶性エポキシド加水分解酵素が増加することにより、αシヌクレニンの凝集・沈着により、神経脱落に繋がっているものと推測されるという。今回の研究成果は、αシヌクレニンの凝集・沈着が関与する神経変性疾患の新しい予防薬・治療薬になるものと期待される、と研究グループは述べている。
▼関連リンク
・千葉大学 プレスリリース