あらゆる免疫細胞をつくりだす血液前駆細胞
東京医科歯科大学は5月7日、あらゆる免疫細胞をつくりだす血液前駆細胞を迅速、簡便かつ安全な方法で大量生産する方法を開発したと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科免疫アレルギー学分野の烏山一教授と河野洋平助教、難治疾患研究所ゲノム解析室谷本幸助助教、独マックスプランク研究所(MPIIB)、独リウマチ研究センター(DRFZ)の研究グループによるもの。研究成果は、国際科学誌「Blood」のオンライン版で発表された。
画像はリリースより
免疫細胞は、骨髄中のわずかな血液前駆細胞からつくられている。これらを体外へ取り出し、安定して大量に増やすことができれば、あらゆる有用な免疫細胞を自在につくることができ、新たな免疫細胞療法の資源として感染防御やがん治療に有用であると考えられる。
これまでの研究では、血液前駆細胞を体外に取り出して培養を続けることは不可能だった。マウス骨髄細胞に対して人為的に遺伝子操作を行うことで、血液前駆細胞を試験管内で増やすことはできたが、人為的な遺伝子操作によって染色体異常や発がんのリスクが増える。また、ヒトでの臨床応用を考えた場合、倫理的に受け入れることは容易ではない。これらを考慮し、研究グループは遺伝子操作を行わない、より安全な方法で血液前駆細胞を量産化する方法の開発を試みた。
マウス血液前駆細胞の一種、3日で10倍に増殖
研究グループは、独自に開発した無血清培地(KIDMEM)を用いて、通常のマウス骨髄から取り出した血液前駆細胞の一種(CLP)を培養。すると、細胞は活発に増殖(3日で10倍)を続け、少なくとも4か月以上は試験管内で増え続けることがわかったという。長期間培養を続けた細胞(cCLP)の特徴を調べたところ、生体内にいるCLPとよく似ており、試験管内であらゆる免疫細胞に成長することができたという。また、免疫細胞がなくなったマウスにcCLPを移植すると、あらゆる免疫細胞が再び体内でつくられることが明らかになったという。
この方法によって、マウス骨髄内のCLP(約1万個)を1か月培養すると、約1兆個のcCLPができると見積もられるという。得られた膨大な数のcCLPは、免疫細胞による感染防御や腫瘍免疫のメカニズム解明など基礎研究を促進するだけでなく、感染症やがんに対する新たな免疫細胞療法開発の基盤として有用である、と研究グループは述べている。
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・東京医科歯科大学 プレスリリース