体を細菌やウイルスから守るタイトジャンクション
九州大学は5月7日、コレステロールが細胞同士の接着を制御する仕組みを解明したと発表した。この研究は、同大大学院理学研究院の池ノ内順一教授、システム生命科学府一貫制博士課程3年重富健太(日本学術振興会特別研究員 DC1)氏らの研究グループによるもの。研究成果は、米国科学雑誌「Journal of Cell Biology」のオンライン版に掲載されている。
画像はリリースより
人間の体は多くの細胞が接着して形成されている。それらが体の表面を覆うことにより、体の外にある細菌やウイルスなどの異物が体内に侵入することを防ぎ、また体の中にある水やイオンが体外に出て行ってしまうことを防いでいる。細胞同士を密につなぎ合わせる構造は「タイトジャンクション」と呼ばれるが、このタイトジャンクションの形成に関わるタンパク質について、これまで多くの研究が行われてきた一方、脂質の働きについては明らかにされていなかった。
慢性炎症の新たな予防法や治療法開発の基礎に
今回、研究グループは、タイトジャンクションの形成に、コレステロールが必須であることを明らかにした。コレステロールは体の中でさまざまな役割を果たしていることが知られているが、細胞同士の接着の制御に関わっていることが明らかとなったのは今回が初めてとなる。
病気の原因となる細菌やウイルスが体内に侵入することを防ぐタイトジャンクションが破綻すると、潰瘍性大腸炎やアトピー性皮膚炎などの慢性炎症の発症につながる。このため、コレステロールを介したタイトジャンクションの制御機構の解明は、慢性炎症の新たな予防法や治療法を開発する上で基礎となる知見だ。
研究グループは、「コレステロールの添加によって膜タンパク質の局在が変化し、細胞膜の構造の形成が誘導された時は本当にびっくりしました」と述べている。
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・九州大学 プレスリリース