横井氏らは、各都道府県における[1]医薬分業率[2]ジェネリック医薬品(GE薬)使用率[3]人口10万人当たりの医師数[4]75歳以上人口比率――の4因子が薬剤料等の指標に対してどの程度関係性があるかを重回帰分析によって調べた。指標としては、院外処方箋1枚における1日当たりの▽総薬剤費▽その構成因子(内服薬、頓服薬、外用薬、注射薬、自己注射に用いる注射針などの医療材料)▽処方薬剤数▽先発医薬品費やGE薬費▽薬局の技術料――を設定した。
厚生労働省が公開している2016年の調剤MEDIASデータなどを入手し、解析を実施した。都道府県によって院外処方箋枚数には差があるため、枚数が多いほどその傾向がより強く反映されるように重み付けを加えた。
解析の結果、院外処方箋1枚当たりの1日処方薬剤数は、医薬分業率が高くなるほど減り、低くなるほど増えることが明らかになった。今回導き出した重回帰式から得た偏回帰係数から影響の度合いを推定すると、医薬分業率が100%の場合の処方薬剤数は、0%の時に比べて0.44剤減少することになる。
「平均的な1日処方薬剤数は2.83剤であることを考慮すると、この効果は無視できない」と横井氏。「医薬分業が進み、処方箋が面に分散することによって薬剤師は、マンツーマンの場合に比べて気兼ねなく医師に疑義照会しやすくなることが影響しているのではないか」と話す。
このほか院外処方箋1枚当たりの1日総薬剤費と4因子の関係を解析したところ、医薬分業が進むほど総薬剤費は減ることが改めて明らかになった。
導き出した重回帰式から推定すると、医薬分業率が1%高まるごとに総薬剤費は約1.2円減少する。日本全国の処方箋枚数を約8億枚として換算すると、1%の医薬分業の進展は、1日総薬剤費を約9億6000万円減らすことになるという。
院外処方箋1枚当たりの先発品の薬剤費、GE薬の薬剤費と4因子の関係の程度もそれぞれ解析した。医薬分業が進むほどこれらは減少する関係が認められたが、金額ベースで両者を比較すると、特に先発品の薬剤費が減少する効果が大きかった。
「これは分業率が高いほどより安価な先発品が使われることを示している」と横井氏。その背景については「薬剤師の介入による効果のほか、分業が進むと処方箋は面に分散し、医師は地域の薬局の採用薬を強く意識するようになって、高額な新薬へのシフトが急速には起こりにくくなるためではないか」と話している。
今回の研究結果をまとめた論文は4月11日、カナダの学術誌「グローバルジャーナルオブヘルスサイエンス」のオンライン版に掲載された。