婦人科がんの中で最も難治性で再発が多い卵巣がん
京都大学は5月2日、卵巣がんの新たな免疫回避のメカニズムを解明したと発表した。この研究は、同大医学部附属病院産科婦人科の滝真奈医員と同大大学院医学研究科の安彦郁助教、馬場長同准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、国際学術誌「Nature Communications」にオンライン公開されている。
画像はリリースより
卵巣がんは、婦人科がんの中で最も難治性の病気とされている。多くが進行がんの段階で診断され、手術や抗がん剤治療を組み合わせた治療を行うが、再発する患者も多い。現状の治療法だけでは効果が十分ではないため、より有効な治療法の開発が強く望まれている。
ケモカイン阻害剤が有望な新規治療薬となる可能性
近年、がん細胞がさまざまな方法で免疫細胞の攻撃を逃れながら増殖する「がん免疫逃避」と呼ばれるしくみがわかってきた。研究グループは、上皮間葉移行(Epithelial-Mesenchymal Transition:EMT)関連遺伝子群が高レベルで発現しているタイプの卵巣がんの予後が特に不良であることから、EMT関連遺伝子であるSnailに着目し、その免疫への影響を調べた。
その結果、これまでSnailはEMTを引き起こしてがんの転移などを促進すると考えられてきたが、卵巣がんがSnailの発現を通して腫瘍内に骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)を誘導し、免疫から逃れているという新しい「がん免疫逃避」のしくみが初めて明らかとなった。さらに、卵巣がんが分泌するケモカインと受容体との結合を阻害する薬剤が、卵巣がんの新規免疫治療として有望である可能性も示したという。
これらの結果は、卵巣がんの免疫逃避のしくみを解明し、新規治療の開発につながる重要な成果であり、今後の臨床応用が強く期待される、と研究グループは述べている。
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・京都大学 研究成果