偏った食事が造血幹細胞に与える影響を研究
金沢大学は4月27日、造血幹細胞には、極端に偏った食事により引き起こされる傷害やがん化を防ぐ仕組みが備わっていることを世界に先駆けて発見したことを発表した。この研究は、同大がん進展制御研究所/ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)の田所優子助教、平尾敦教授らの研究グループが、スタンフォード大学、中国医学科学院、東京大学、京都大学、大阪大学、慶應義塾大学、九州大学、がん研究会がん研究所との共同で行ったもの。研究成果は「Cell Stem Cell」に掲載されている。
画像はリリースより
造血幹細胞は、多分化能と共に自己複製能を兼ね備えている。私たちの体は炎症や活性酸素などさまざまなストレスにさらされているが、一生涯にわたって血液細胞を供給し続けるためには、これらのストレスから造血幹細胞を守るシステムが必要であると考えられている。近年の極端に偏った食生活、特に脂肪分の多い食事は、生活習慣病やがんなどさまざまな疾患の要因になることが知られているが、実際にそのような食事によるストレスが造血幹細胞にどのような影響を与えているのかは、これまで明らかにはされていなかった。
高脂肪食が腸内細菌叢の変化を介して造血幹細胞に影響
研究グループは、マウスを用いた実験により、Spred1という分子が造血幹細胞において、高脂肪食の摂取によるERKシグナルの活性化を抑制し、血液のがんである白血病の発症を防いでいることを発見した。さらに、高脂肪食が腸内細菌叢の変化を介して造血幹細胞の制御に影響を及ぼしていることに加え、通常は、Spred1が造血幹細胞がストレスで機能を失って白血病化しないように守っているが、そのシステムが破たんすると造血幹細胞に傷害を加え、白血病発症の原因になることを明らかにした。
今後、Spred1の機能調節機構と極端に偏った食生活に伴う腸内細菌叢の変化との関係性を詳細に解析することで、白血病をはじめとする血液の異常を示す病態の解明、さらに研究を進めることによって、将来的には白血病の予防や治療法の向上につながることが期待される、と研究グループは述べている。
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