九州・沖縄母子保健研究に参加した1,199組の母子を対象に
愛媛大学は4月25日、妊娠中のカフェイン摂取が、生まれた子どもの仲間関係問題に予防的である可能性を示す研究成果を発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科疫学・予防医学講座の三宅吉博教授らと、国立保健医療科学院、東京大学、琉球大学らの研究グループによるもの。研究成果は、学術誌「Nutritional Neuroscience」の電子版に公表された。
カフェインは、世界で最も摂取されている精神刺激薬。成人においてカフェイン摂取は健康に良いと考えられているが、妊娠中のカフェイン摂取の安全性は定かではない。これまで、妊娠中のカフェイン摂取と生まれた子どもの行動的問題との関連を調べた疫学研究は少なく、また、その結果は一致していない。
今回、研究グループは、九州・沖縄母子保健研究に参加した1,199組の母子を対象として、妊娠中に食事歴法質問調査票を用いて妊婦の栄養データを取得。5歳時追跡調査で保護者に、子どもの強さと困難さアンケート(SDQ)の親評定フォームに回答してもらった。2008年の久留米大学の報告に基づき、境界水準あるいは臨床水準にある場合、情緒問題、行為問題、多動問題、および仲間関係問題が認められると定義。正常水準の子どもを基準とし、境界水準或いは臨床水準の子どもの補正オッズ比を算出した。ベースライン調査時の母親の年齢、妊娠週、居住地、子数、両親の教育歴、家計の年収、妊娠中の母親のうつ症状、妊娠中の母親のアルコール摂取、妊娠中の母親の喫煙、子どもの出生体重、性別、母乳摂取期間及び生後1年間の受動喫煙を交絡要因として補正したという。
情緒、行為、多動の問題との有意な関連はみられず
妊娠中のカフェイン摂取に寄与する食品は、「日本茶・中国茶」が74.8%、「コーヒー」が13.0%、「紅茶」が4.4%、「菓子類」が4.0%、「ソフトドリンク」が3.7%だった。情緒問題、行為問題、多動問題、仲間関係問題は、それぞれ、子どもの12.9%、19.4%、13.1%、8.6%に認められたという。
画像はリリースより
また、1,199名における妊娠中のカフェイン摂取量/日を4等分すると、最も摂取の少ない群と比較して、3番目に摂取の多い群および最も摂取の多い群で、仲間関係問題のリスクが有意に低下したという。その補正オッズ比はそれぞれ0.52(95%信頼区間:0.29-0.91)と0.51(95%信頼区間:0.28-0.91)だった。また、その負の傾向性P値は0.01と統計学的に有意だったという。一方、情緒問題、行為問題、多動問題では、いずれも有意な関連はなかったという。
研究グループは、「妊娠中のカフェイン摂取は生まれた子の仲間関係問題に予防的なのかもしれない」と述べており、妊娠中の食習慣の変容により、子供の行動的問題を予防できる可能性を示す非常に関心の高い研究成果であるとしている。
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・愛媛大学 プレスリリース