脳梗塞発症率と季節差の関連性を調査
国立循環器病研究センターは4月25日、同センターで入院治療を受けた脳梗塞連続症例の登録情報に基づいて、脳梗塞患者の件数やその重症度における季節差を明らかにしたと発表した。この研究は、同センター脳血管内科・脳神経内科の豊田一則副院長らの研究チームによるもの。研究成果は「Circulation Journal」に掲載されている。
画像はリリースより
心臓病や全身血管病のほとんどは、冬に多い病気とされている。脳卒中においては、脳出血は冬に多いが、脳梗塞の季節差については研究者によって見解がわかれている。特に過去の研究では疫学的な発症率が重視され、疾病の重症度や長期転帰を調べた研究は多くない。今回の研究では、脳梗塞を病型ごとに分け、また1年後までの追跡情報を基に患者の転帰を調べるという、従来試みられなかった切り口で季節差を検討した。
1年を通して注意すべき病気であることが判明
研究では、2011年から2015年までの5年間に国循で入院治療を受けた、急性期脳梗塞患者2,965例(中央値75歳、女性1,170例)を対象とした。冬(12~2月)、春(3~5月)、夏(6~8月)、秋(9~11月)に分けた場合の入院件数を、年齢(75歳超)、病型(心疾患に原因をもつ心原性脳塞栓症)、入院時重症度(NIH Stroke Scaleで10点以上に該当する中等症~重症例)の要因を用いて解析。その結果、全体でみると秋に件数がやや少ない程度の季節差しか認められなかったが、75歳超の患者、心原性脳塞栓症患者、中等症~重症の患者に限定すると、いずれも冬の割合が目立って高かった。これは、心原性脳塞栓症の最大の原因である心房細動(不整脈)の新規発症が冬に多いこと、そして心原性脳塞栓症患者は概して高齢で症状が重いことなどが一因として考えられる。
入院時の重症度と1年後の転帰に関しては、冬に重症例が目立つ。また、冬や春の脳梗塞患者は秋の脳梗塞患者に比べ、中等症~重症例が有意に多い。1年後転帰は、冬がやや不良だが、統計学的な有意差はなかった。死亡例の割合は、夏が秋に比べて高いことがわかった。
過去の報告では、脳梗塞の発症率について、寒い時期が多いとする報告がある一方、夏に多いとの報告もあり、一定の見解は得られていない。これは、研究ごとの民族の違い、調査方法の違いなどに因るところも大きい。心房細動などの心臓病を原因とするタイプの脳梗塞は、他の全身血管病と同様に冬の病気と言えるが、脳動脈の動脈硬化が原因となるタイプの脳梗塞では、脱水などが契機となるので、暑い季節にも注意が必要であり、1年を通して注意を払うべき病気と言える。また、重い後遺症を残さないためにも疑った時点ですぐに救急車を呼び、専門病院を受診する必要があると研究チームは述べている。
▼関連リンク
・国立循環器病研究センター プレスリリース