フルクトースの過剰代謝の抑制で、メタボや糖尿病性腎臓病を改善
名古屋大学は4月25日、日本における透析導入原因で第1位の原疾患である糖尿病性腎臓病の進展における新しいメカニズムを解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科腎臓内科学の道家智仁客員研究員、同大学医学部附属病院腎臓内科の石本卓嗣助教、同大学医学系研究科分子生物学の門松健治教授、腎臓内科学の丸山彰一教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Metabolism」に掲載されている。
画像はリリースより
20世紀以降、先進国を中心に砂糖の摂取量が増加した。さらに、天然甘味料である果糖ブドウ糖液が開発されて以降、清涼飲料水・加工食品に広く使用されるようになり、それらに多量に含まれる果糖(フルクトース)の摂取量も飛躍的に増加している。フルクトースの摂取と、肥満・糖尿病・高血圧・脂肪肝などの代謝性疾患の発症には、相関関係があることが知られている。また、フルクトースは食事由来のみならず、糖尿病においてはポリオール経路を介して体内にて産生される。研究グループはこれまでに、外因性および内因性のフルクトースの過剰な代謝を抑制することで、メタボリックシンドロームや糖尿病性腎臓病が改善することを報告してきた。
フルクトースは主にフルクトース代謝酵素であるケトヘキソキナーゼ(KHK)で代謝される。さらに、KHKにはKHK-CとKHK-Aの2種類が存在する。KHK-Cは腎臓・肝臓・小腸に存在し、フルクトースの代謝能力が高い。一方、KHK-Aは腎臓を含め幅広い臓器に分布し、フルクトースの代謝能力が低く、詳細な機能は不明な部分が多かった。
選択的KHK-C阻害薬がメタボ新規治療開発につながる可能性
今回の研究では、糖尿病性腎臓病におけるKHK-AおよびKHK-Cそれぞれの役割解析を実施。その結果、KHK-Cによるフルクトース代謝は、酸化ストレス・核酸分解を介して尿細管障害を引き起こすことがわかり、KHK-Cによるフルクトース代謝が糖尿病性腎臓病の増悪の一因であることが判明した。その一方で、KHK-Aの欠損は腎臓でのさらなるフルクトース代謝の亢進・炎症の増悪・低酸素を誘導し、より重度の尿細管障害・腎機能障害を引き起こすことから、糖尿病性腎臓病においてKHK-Aは保護的な役割を持つことが明らかとなった。その結果から、KHK-Aがフルクトース代謝酵素以外の機能を持つことに由来することもわかった。
今回の研究成果は、糖尿病性腎臓病の進展におけるKHK-C、KHK-Aの相反する役割を示すものであり、選択的なKHK-C阻害薬の開発は、糖尿病性腎臓病の進展抑制が期待されるだけではなく、メタボリックシンドロームの新規治療法に結びつくことが期待されると研究グループは述べている。
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