ナルディライジンの抑制で大腸がんの発症・進展を制御
京都大学は4月20日、タンパク質ナルディライジンを抑制することで、大腸がんの発症・進展が抑制されることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学研究科の妹尾浩教授、滋賀医科大学の西英一郎教授らの研究グループによるもの。研究成果は「JCI Insight」に掲載されている。
画像はリリースより
日本国内において、大腸がんは、女性の死亡率第1位、男性では第3位を占めており、死亡者数もこの30年間で約3倍に増加。危険因子として飲酒、喫煙、肥満、動物性の食肉などが知られている。大腸がんの大半は、複数の遺伝子に変異が生じることで発症し、その中でも家族性大腸腺腫症の原因遺伝子であるAPCや、p53などは代表的な原因遺伝子として知られている。研究グループはこれまでに、タンパク質ナルディライジンが体温調節やインスリン分泌などのさまざまな生命現象を制御し、関節リウマチやアルツハイマー病の病態生理にも関わっていることを報告している。しかし、どういうメカニズムでがんの進展にかかわっているかは明らかになっていなかった。
ナルディライジンを標的とした新たな治療法の開発に期待
今回研究グループは、大腸がんモデルマウスを用いて、腸管上皮のナルディライジンを抑制すると大腸がんの進展が抑制され、逆にナルディライジンを増やすと大腸がん進展が促進されることを明らかにした。また、p53の発現はアセチル化という修飾によって安定化するが、その調節にHDACという脱アセチル化酵素が重要な役割を果たしていることもわかっている。大腸がんの細胞を用いて検討した結果、NRDCの発現を抑制するとHDACによる脱アセチル化が減少し、p53のアセチル化が亢進してその発現が安定化することが判明。これにより、p53発現が安定化し上昇することでアポトーシスが誘導され、大腸がんの発症・進展が抑制されることが示唆された。
p53は代表的ながん抑制因子のひとつで、多くのがんにおいて重要な役割を持つ。さらにナルディライジンが胃がんや肝細胞がんなど、他のがんにおいても重要な役割を果たすこともわかっている。今回の研究の成果を基盤とし、p53の新調節因子であるナルディライジンを標的にした新たな治療法の開発が期待されると研究グループは述べている。
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・京都大学 研究成果