ソラフェニブの内服中止の原因ともなる手足症候群
新潟大学は4月17日、肝臓がんの治療に使用される抗がん剤の副作用である手足症候群に対して、日本古来の食品である鰹だしが有効であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科の上村顕也講師、寺井崇二教授らによるもの。研究成果は、「Cancer Management and Research」、「Biochemical and Biophysical Research Communications」に掲載されている。
画像はリリースより
進行肝がんに対する分子標的薬であるソラフェニブは、より長く内服を継続することで進行肝細胞がん患者の生命予後延長を期待できると報告されているが、同時に副作用の制御が最重要課題とされている。なかでも手足症候群はソラフェニブを内服する患者の約半数に発症することが知られ、それを理由とした内服中断によって予後や生活の質に影響を与えることから、対策の確立が急務である。
これまでの検討で、同症候群は、抗がん剤により血管が障害された結果、血流が悪くなり生じる副作用であることが判明している。一方、日本古来の食品である鰹だしには、血管拡張効果があることが報告されている。そこで今回の研究では、鰹だしを摂取する事により、ソラフェニブ内服中の手足症候群の発症制御、症状軽減効果が得られるかを検討した。
鰹だしに含まれる血管拡張作用のある「ヒスチジン」
研究グループは、ソラフェニブの内服治療のため入院した患者に、鰹だしを飲用してもらい、末梢血流量の変化、手足症候群の発症について経過観察を行う臨床研究を遂行。加えて、同症候群の発症について年齢、性別、肝硬変の有無、病期、投与量、抗腫瘍効果、内服期間、末梢血流量の増減、鰹だしの飲用の有無の各因子別に検討を行った。その結果、手足症候群を発症した患者は、エコー検査で、手足の温度、眼底血流などが低下することが判明。鰹だしを飲用した患者では血流低下がおこりにくく、同症候群の発症が明らかに少ないことが判明した。
次に、鰹だしの成分であるヒスチジンという血管拡張作用のあるアミノ酸が、ソラフェニブの血管障害を制御するか、動物モデルを用いて検証した。血管壁がGFPという緑色の蛍光タンパクで光り、血管を可視化できるメダカを対象とし、その尾ひれの血管で手足症候群の状況を再現。そのメダカを同剤およびヒスチジンを含有した水槽で飼育し、血管変化を経時的に測定し、同剤による血管障害メカニズムとヒスチジンによる予防効果を検討した。その結果、メダカの尾ひれの血管が拡張。これにより、ヒスチジンの血管拡張効果が明らかとなり、ソラフェニブによる手足症候群の発症予防にも繋がることが示唆されたという。
今回の研究成果は、手足症候群の発症予防を推進するとともに、ヒスチジンのサプリメントによる予防を含めた新たな治療法の開発に役立つ、と研究グループは述べている。
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・新潟大学 研究成果