白血球の活性化で炎症反応を起こす既存のアジュバント
東京医科歯科大学は4月17日、Bリンパ球に作用することで抗体産生を増強する化合物を開発したことを発表した。この研究は、同大難治疾患研究所免疫疾患分野の鍔田武志教授らの研究グループ、同研究所分子構造情報学分野の伊藤暢聡教授らと、岐阜大学、京都大学、理化学研究所、カリフォルニア州立大学、デューク大学の研究グループによるもの。研究成果は「Frontiers in Immunology」に掲載されている。
画像はリリースより
免疫賦活剤(アジュバント)はワクチンなどに使用されているが、既存のアジュバントは、先天免疫細胞を活性化することで抗体産生などの獲得免疫反応を増強する。その一方で、先天免疫細胞であるマクロファージや好中球などの白血球を活性化することで炎症反応をおこし、副作用につながることがわかっている。
CD22に結合する化合物を開発、抑制性の機能を阻害
Bリンパ球の細胞表面には、シアル酸に結合する抑制性のレセプターであるCD22が存在する。研究グループは、CD22に高い親和性で結合するシアル酸誘導体を開発し、この化合物がCD22の抑制性の機能を阻害することで、抗体産生を司るBリンパ球の活性化を増強し、抗体産生を増強することを明らかにしたという。また、既存のアジュバントに比べて炎症を起こす作用が極めて弱いこともわかったとしている。
今回の研究により、Bリンパ球に特異的に作用することで、免疫応答を制御する化合物を開発することに成功した。これまでのアジュバントにはない、自然免疫細胞の活性を変化させずに抗体産生を制御するという特色があり、より安全なワクチンの開発などへの応用が期待される、と研究グループは述べている。
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・東京医科歯科大学 プレスリリース