RAの診断と活動性、両者の判定に有効なバイオマーカーを探索
筑波大学は4月13日、関節リウマチ(RA)患者における特異的な新規バイオマーカー、シトルリン化inter-α-trypsin inhibitor heavy chain 4(cit-ITIH4)タンパクを発見したと発表した。この研究は、同大学医学医療系の松本功准教授、住田孝之教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Arthritis Research & Therapy」でオンライン公開されている。
画像はリリースより
RAは、国内に70万人以上の患者がいると言われているものの、病因については未だ不明な点が多い自己免疫性炎症性疾患である。RA患者はシトルリン化タンパクに対する免疫応答が存在すると考えられており、血清中の抗シトルリン化タンパク抗体(ACPA)の有無を検査することは診断の大きな一助となる。しかしながら、ACPAはRAの活動性(病状の程度)の指標とはならず、陰性となっても罹患している場合がある。さらに、活動性指標となる炎症マーカーのCRP(C反応性タンパク)は、RA以外の感染症などにも反応するため、RAの診断と活動性、両者の判定に有効な特異的バイオマーカーの探索が課題となっている。
cit-ITIH4タンパクが、RAの診断と治療経過の把握を可能に
同研究グループは、シトルリン化タンパクがRAの病状にどのように関与しているかを調査。その結果、シトルリン化タンパクがRAで疾患特異的に出現することを発見した。さらに質量分析により、このタンパクがITIH4(citITIH4)であること、またITIH4タンパクの438番目のアルギニンが共通にシトルリン化していることを、RA患者および関節炎モデルマウスで同定した。加えて、臨床的な解析において、cit-ITIH4陽性RA群では有意にDASCRPなどの総合疾患活動性指標が高く、生物学的製剤などの治療を施すと、活動性低下とともにcitITIH4発現の減弱が見られ、ACPA陰性群でも陽性率が高いことから、cit-ITIH4が診断および活動性のバイオマーカーとなり得ることが判明。これらのことから、cit-ITIH4タンパクはRA診断、および疾患活動性の経過を追う上でも重要なバイオマーカーであり、有効な生物学的製剤などでの治療後の変動や、その治療薬を中止するためのバイオマーカーにもなりうることが明らかとなった。
今後、RA患者の血清中のcit-ITIH4が測定できるキットの開発をはじめ、他の関節炎(分類不能関節炎を含む)や早期RA患者でのcit-ITIH4関与の検討、血清中抗シトルリン化環状ITIH4抗体の測定キットの開発(新しいACPAキット)、Cit-ITIH4反応性T細胞の検索などへの展開が考えられる。また、cit-ITIH4はRAの病勢とともに変動するタンパクであり、バイオマーカーとして頻回に測定される可能性がある。さらに、血中になぜcit-ITIH4が特異的に出現するのかが解明されれば、RA病態のメカニズムの一端が明らかになると研究グループは述べている。
▼関連リンク
・筑波大学 プレスリリース