■「自己治療」へ貢献意識高く-人員とスペースに課題も
自己血糖測定事業に参加した保険薬局が検体測定室として登録を継続している割合は56薬局中30薬局(53.6%)と約半数にとどまることが、佐賀県薬剤師会と第一薬科大学の研究グループの調査で明らかになった。実際に稼働していたのは23薬局で、多くの薬局はセルフメディケーションへの貢献を理由に、無料や500円以下の低料金で検体測定室の取り組みを継続していた。地域住民の健康増進に貢献したいとの高い意識がうかがえる一方、人員やスペースの問題で継続できない切実な課題も浮かび上がった。
佐賀県薬では、2014年4月に厚生労働省から検体測定室に関するガイドラインが示されたため、14年度と15年度の厚労省委託事業「薬局・薬剤師を活用した健康情報拠点推進事業」で自己血糖測定事業を実施した。その一つとして、薬局店頭における自己血糖測定による糖尿病の早期発見と受診勧奨への取り組みを進めてきた。
今回、県薬と第一薬大のグループは、自己血糖測定事業に参加した薬局が事業終了後の現在も検体測定室として継続しているかの経過と要因について、同事業に参加した県薬会員97薬局を対象に調査を行った。
その結果、回答のあった56薬局で現在における検体測定室の登録の有無を尋ねたところ、30薬局と約半数が検体測定室の登録を継続していた一方、26薬局は登録を継続していないことが分かった。
具体的に見ると、14年度のみ参加した15薬局では全ての薬局が検体測定室を登録していなかったが、15年度のみ参加した4薬局は、全ての薬局が登録を継続していた。14年度と15年度共に参加した37薬局については26薬局が登録を継続していたが、11薬局は登録していなかった。
検体測定室の登録を継続していた30薬局に理由を聞いたところ、最も多かったのが「セルフメディケーションに貢献」で22薬局、次いで「薬局の機能拡大」が19薬局、「健康サポート薬局につながるため」が12薬局と、多くの薬局が地域でセルフメディケーションへの役割を果たしたいと考えていることがうかがえた。
一方、検体測定室を継続できなかった理由としては「人員」が12薬局と最も多く、次いで「スペース」が7薬局だった。そのほか、「処方箋を持ってきた患者が多い時は対応できなかった」「1人薬剤師で余裕がなかった」などが挙げられ、調剤業務に追われる中、検体測定室に取り組む薬剤師とスペースの確保が継続を難しくしていることが考えられた。
同事業の終了後も検体測定室の登録を継続していた30薬局のうち、血糖値とHbA1cが基準値外の受検者に受診勧奨などのフォローを行っていたのは9薬局だった。
その中で「治療につながっている人」が17人、「経過観察」が10人、「異常なし」が4人との結果で、薬局での自己血糖測定が多くの受検者の治療につながっていることが分かった。
さらに、検体測定室の登録を継続している30薬局のうち、実際に稼働しているのは23薬局だった。そのうち12薬局は無料で血糖値測定を継続しており、6薬局は血糖値測定を有料で実施していた。有料でも500円以下の低料金で測定している実態が浮かび上がった。5薬局では血糖値に加え、HbA1c、脂質3項目の測定も行っていたが、どの薬局も1000円以下の低料金に抑えて実施していた。
こうした実態から、研究グループは「利益が目的ではなく、セルフメディケーションへの貢献など地域住民の健康増進に寄与していくことが目的であることが考えられた」とし、「セルフメディケーションにつながる検体測定室の継続は実際に厳しい状況であり、これからの検体測定室のあり方について議論が必要」と提言している。