次世代胎児モニタリング装置が誕生
東北大学とアトムメディカル株式会社は4月12日、次世代胎児モニタリング装置「アイリスモニタ(R)」を共同開発し、臨床試験を経て、商品化に成功し、平成30年7月から販売を開始すると発表した。この研究開発は、同大医学系研究科融合医工学分野の木村芳孝教授を中心に行われたもので、同装置は5月11日から仙台市で開催される日本産科婦人科学会でも展示される予定。
画像はリリースより
早産(妊娠22週から36週までの分娩)が世界的に増加するなか、少子高齢社会の周産期医療における早産児の救命は、重要な課題のひとつとされている。また、早産児が新生児集中治療室(NICU)に入院すると、退院までに早産児1人に対し多大な医療費が発生し、病院や家族の負担を増大させる。しかし、切迫早産の確実な管理法や治療法は未だ確立されておらず、世界各国でも統一されていないという現状がある。
現在、胎児状態評価項目のひとつである心拍数モニタリングは、超音波ドプラ法を用いた装置で行われている。この方法では、超音波を用いて胎児の心臓の動きから心拍数を算出するため、妊娠中期では小さな胎児の心臓に超音波を確実にあて続けることが難しいという課題があった。また、妊娠後期では、安定した胎児の心拍数モニタリングが可能だが、心拍数の詳細な変化を捉えることは出来なかった。
海外からも注目を集める、臨床の現場から生まれた純国産医療機器
東北大学とアトムメディカルは、母体腹壁から母体雑音と胎児の信号が混合した生体電気信号を計測し、そこから胎児の微小な生体電気信号を抽出する全く新しい原理を用いた胎児心拍数モニタリング装置「アイリスモニタ」を開発し、商品化に成功した(平成29年2月23日薬事承認取得)。同機器は、開発、知財管理、臨床試験、製品化に関わる全工程を産学連携で行った、臨床現場発の純国産医療機器である。臨床試験での実績が妊娠24週からあり、同時期から母体腹壁誘導によって非侵襲的に胎児の心拍数を計測できる装置は世界初となる。
さらに、東北大学の研究グループでは、生体電気信号から胎児心拍数の変化を詳しく分析することにより、これまで発見不可能といわれていた胎児期の脳性麻痺の予知を遺伝子レベルで動物実験を用いて解明しており(「Frontiers in Physiology」に掲載予定)、母体と胎児の心拍リズムのタイミングの相関関係の発見や、自閉症発症と胎児心拍数変化との関係など、国内外多数の機関との共同研究が実施されている。
また、日本における純国産の医療機器の開発・実用化・海外展開が強く望まれるなか、国際市場からも注目を集める同機器が、周産期医療の発展に大きく貢献することが期待されている。
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・東北大学 プレスリリース