乳がんにおける腫瘤、良性と悪性の判別が難しい場合も多く
東北大学は4月9日、SAS Institute Japan株式会社の「SAS(R) Viya(R)」を採用し、乳がん診断の補助として、ディープ・ラーニングを用いた乳房エコー画像内の腫瘤識別を目的とした研究を開始したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科医学統計学分野の山口拓洋教授らの研究グループによるもの。
乳がんは日本人女性における部位別がん羅患者数の首位を占めており、今後も増加傾向にあると予測されている。乳がんの早期発見に向けた対策として、乳房エコー検査(乳腺超音波検査)が普及しつつあるが、読影が技師や医師の主観や経験に依存しがちなことや、読影による負担の増加が課題となっている。乳がんの主要な画像所見である腫瘤は、その形状や特徴が多種多様で良性と悪性の判別が難しい場合も多く、より正確に判定できる技術が求められている。
SAS Viyaは、SASが2016年末に出したAIプラットフォーム。データの探索から機械学習まで、幅広くデータ分析することができるという。
対象の識別に有効な特徴量を学習によって自動的に獲得
研究グループは、エコー画像の読影にディープ・ラーニングの技術を活用することを検討。とくに注目したのが、画像を認識して高い精度で分類・推論できる手法であるCNN(Convolutional Neural Network)だ。CNNの最大の特長は、対象の識別に有効な特徴量を学習によって自動的に獲得する点。CNNを多様な特徴を示す乳がんの病変に応用するために、CNNの実装が可能なソフトウェアであるSAS Viyaを採用したという。今回の研究では、SAS Viyaを活用して超音波画像を自動診断するシステムを作成し、その精度および有用性について検討することを目指すとしている。
研究を進めていくにあたり、SASは同社製品の学術研究での活用と教育機関における人材育成に向けた取り組みとして、また、同社の推進するデータを活用した人道支援・社会支援の取り組みであるData for Goodの一環として、東北大学にSAS Viyaソフトウェアおよび利用機材と技術的支援を提供し、研究をバックアップするという。
ディープ・ラーニングによる自動診断が実用化すれば、画像診断の際の医師の負担軽減だけでなく、偽陽性による無用な侵襲的検査や患者の心理的負担を回避できるようになり、医療費の削減にもつながることが期待される、と研究グループは述べている。
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