ビームゲン、約10%はHBs抗体を獲得できず
東京大学は4月5日、B型肝炎ワクチン(HBワクチン)接種後の反応が異なる3群でゲノムワイド関連解析(GWAS)およびHLA関連解析を実施し、HBワクチン効果に影響を与える新規遺伝要因を同定したと発表した。この研究は、国立国際医療研究センター研究所ゲノム医科学プロジェクト上級研究員兼同大学大学院医学系研究科人類遺伝学分野の西田奈央客員研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「Hepatology」オンライン版にて公開されている。
画像はリリースより
現在、世界180か国以上で、B型肝炎ウイルス(HBV)に対してHBワクチン接種が行われている。HBVには複数の遺伝子型(Genotype)が存在しており、日本はGenotype C(HBV/C)が最も多い。そのため日本では、日本で開発されたHBV/Cに対応するHBワクチン(ビームゲン)が使用されてきた。しかし、ビームゲン接種者のうち、約10%はその中和抗体であるHBs抗体を獲得できないという問題があり、その原因はわかっていなかった。
今回、国立国際医療研究センターを研究代表施設とする多施設共同研究において、成人日本人1,193例を対象としたゲノムワイドSNPタイピングを実施。ワクチン低反応群(107例)、ワクチン中反応群(351例)、ワクチン高反応群(735例)の3群に分けてGWASを実施した。
BTNL2遺伝子、ワクチン高反応に関連
ワクチン低反応群と高反応群を比較した結果、HLA class III領域に存在するBTNL2遺伝子が有意な関連を示したという。また、3群を比較したところ、HLA class II領域に存在するDRB1-DQB1遺伝子とDPB1遺伝子がそれぞれワクチン応答性に関連することが明らかになったとしている。
次に、ゲノムワイドSNPタイピングデータを用いてHLA imputationを実施し、HLAアリルおよびハプロタイプとHBワクチン効果の関連を詳細に解析。HLAアリルおよびハプロタイプの頻度をHBワクチン低反応群とB型慢性肝炎患者群で比較した結果、HBワクチン応答性に特異的に関わるDRB1-DQB1ハプロタイプが存在することを判明したという。さらに、HBワクチン高反応群と健常対照群について同様の比較をした結果、HLA class II遺伝子(DR-DQ、DP)はワクチン高反応に有意な関連を示さなかった。ワクチン高反応群と低反応群のGWASでBTNL2遺伝子が検出されたことから、BTNL2遺伝子はワクチン高反応に関連すると考えられるという。
今回の研究により、特定のHLA-DR-DQ分子によるHBs抗原の認識(ワクチン低反応)、およびBTNL2分子によるT細胞やB細胞の活性制御(ワクチン高反応)がHBワクチンの効果に重要な役割を果たすことが明らかとなった。研究グループは、「この研究の成果をもとに、国際共同研究を進めることで、ユニバーサルワクチネーションが行われている日本やその他の国において、HBワクチンの適正かつ効率的な使用方法の確立が期待できる」と述べている。
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・東京大学大学院 医学系研究科・医学部 プレスリリース