線維化病変は既存の治療が効きにくいことも
北海道大学は4月4日、白血病などの治療に用いられる造血幹細胞移植の合併症である慢性移植片対宿主病(GVHD)の線維化病変で、筋線維芽細胞内のHSP47という分子が重要な役割を果たしていることを発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究院の豊嶋崇徳教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Blood」に掲載されている。
同種造血幹細胞移植は、難治性の白血病などの治癒を目指せる重要な治療法であるが、移植後の慢性GVHDは、皮膚・涙腺・唾液腺・口腔粘膜・肺・肝臓など、全身のさまざまな臓器を侵す。特に慢性GVHDによる線維化病変は、治療が効きにくく、患者の命に関わるのみならず生活の質を著しく悪化させる。移植成功のためには慢性GVHDの予防や治療が不可欠だが、慢性GVHDの治療法は、ステロイド剤や免疫抑制剤など副作用の強いものが中心であり、線維化病変はこれらの治療が効きにくいこともしばしばある。そのため、慢性GVHDの線維化病変に対する新しい治療法の開発が待たれていた。
VA-lip HSP47 siRNAの投与で線維化が改善
筋線維芽細胞のHSP47は線維化の原因として知られるが、このHSP47を特異的に阻害するHSP47siRNA含有ビタミンA結合リポソーム(VA-lip HSP47 siRNA)を静脈内投与すると、筋線維芽細胞に選択的に取り込まれて、HSP47の発現を抑制。HSP47の発現が抑制されると、線維化病変でコラーゲン産生が抑えられ、線維化の改善が認められた。さらに、VA-lip HSP47 siRNAは、移植後の全身的な免疫機能に対しては影響が少なく、副作用の比較的少ない治療法であることも示されたという。
画像はリリースより
この治療法は、皮膚や唾液腺など異なる組織の線維化を改善し、さまざまな臓器の線維化の治療に応用できることが予想される。また、これまでステロイド剤や免疫抑制剤など副作用の強い治療薬が使われてきた慢性GVHDの線維化病変に対する、有効で安全な新規治療法となる可能性が示された、と研究グループは述べている。
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・北海道大学 プレスリリース