HLAホモ接合体の細胞を有するドナーからiPS細胞作製
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)は3月29日、再生医療実現拠点ネットワークプログラムの一環として、2013年度より進めている「再生医療用iPS細胞ストックプロジェクト」において、新たに臍帯血由来iPS細胞株を作製し、提供を開始したと発表した。
再生医療用iPS細胞ストックプロジェクトとは、HLAホモ接合体の細胞を有する健康なドナーからiPS細胞を作製し、あらかじめさまざまな品質評価を行った上で、再生医療に使用可能と判断できるiPS細胞株を保存するプロジェクト。HLAは、ヒトの主要組織適合遺伝子複合体であるヒト白血球型抗原(Human Leukocyte Antigen)の略で、細胞の自他を区別する型だ。
HLAは、白血球だけでなく、ほぼ全ての細胞に分布していて、ヒトの免疫に関わる重要な分子として働いている。自身の持っている型と異なるHLA型の人から細胞や臓器の移植を受けると、体が異物と認識し、免疫拒絶反応が起こる。そのため、細胞や臓器を移植する際にはHLA型をできるだけ合わせることで、免疫拒絶反応を弱めることが重要だ。
HLAの型は多様で、A座、B座、C座、DR座、DQ座、DP座などと呼ばれる抗原の組み合わせで構成されており、各抗原に数十種類の型があるため、合わせて数万通りの組み合わせがある。そのため、自分と完全に一致するHLA型の人を見つけるのは、数百~数万人に1人の確率といわれる。HLAホモ接合体は、父親と母親から同じHLA型を受け継いだ場合のことをいう。
日本人で最も多いHLA型では初めての女性由来株
今回提供を開始した臍帯血由来のiPS細胞株は、2017年10月に提供を開始した臍帯血由来iPS細胞と同じ日本人で最も多いHLA型だが、初めての女性由来株となる。バリエーションに富んだストックを揃えることで、実際に分化細胞を作製する研究機関で、目的とする分化細胞に最適なiPS細胞ストックを選択してもらうことが可能となり、より有効かつ安全な再生医療が提供されることが期待されるという。
今後CiRAでは、引き続き日本人で頻度の高いHLAホモ接合体を有するドナーの協力により、当面の目標として日本人の3~5割程度をカバーできる再生医療用iPS細胞ストックの構築を目指し、iPS細胞の製造に取り組んでいくとしている。
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