■規制改革会議がヒアリング
政府の規制改革推進会議は27日、都内で「オンライン医療の推進」をテーマに公開ディスカッションを行った。薬機法で対面の服薬指導を義務づけている中、診療から処方箋医薬品の授受まで、テレビ・電話などの情報通信機器を用いた「一気通貫のオンライン医療」を進めるべきとの意見が相次いだが、厚生労働省は「必要十分な実施基準を決めてから国家戦略特区の中でチャレンジしてもらう」とし、特区以外の導入には慎重な姿勢を示した。
オンライン医療をめぐっては、診療は「非対面」が認められているものの、服薬指導は対面を原則としており、この日のディスカッションでは診療から服薬まで一貫してオンラインで完結する在宅医療を実現するための課題と方策を議論した。
織田病院の織田正道理事長は、「85歳以上の患者に通院は無理で、マンパワーをカバーするのはオンラインしかないと思う。服薬指導を含めて一貫して行えるようにすべき」と強調。同会議の林いづみ医療・介護ワーキンググループ座長や、他の病院関係者などから「一気通貫の」オンライン導入を求める意見が相次いだ。
日本薬剤師会の森昌平副会長は、「対面指導が原則」としつつも、「どうしてもできないケースがあればどのようにするかを考える必要がある」との認識を示した。その上で、対面の服薬指導でなければ調剤できない医薬品もあるため、「これらは今後の検討課題だ」とした。
規制改革推進会議の大田弘子議長は、「困っている高齢者がたくさんいる中で、一部の自治体では既にオンラインの服薬指導を行っている実態を考慮し、期限を設けて検討してほしい」と、厚労省に要請した。
厚労省の森和彦大臣官房審議官(医薬担当)は、「医療者と患者の信頼関係を作るなどの意味で対面は大事な原則」としつつも、「何が何でも対面でなければいけないという考え方ではない」と強調。
一方で、「特区制度の中で実証実験を行った結果を見てから全国的な展開を考えることとしているので、できる限り必要十分な実施基準を決めてから特区の中でチャレンジしてもらう」と応じ、特区以外の導入に慎重な姿勢を示した。
日本医師会の今村聡副会長は、高齢の患者がタブレットなどの情報通信機器を使用する際、看護師が患者宅に赴き、サポート役を担っている自治体があることを引き合いに、「患者には介助者が必要で、療養環境を確認できるメリットもある」と指摘。薬剤師が諸外国に比べて多いことや、オンライン医療において薬剤師の役割が明確化されていないことなどを踏まえ、「薬剤師が患者宅に赴き、介助者になることもあり得る」と、薬剤師の積極的な活用を求めた。
今回の議論を踏まえ、同会議の医療・介護ワーキンググループで実証実験のあり方を明確にし、実験結果の問題点などを整理した上で、6月の答申に反映させたい考えだ。