紀平氏は「対人業務という言葉だけ見ると、笑顔で応対するとか、そんな受け止め方をされる恐れもあるが、決してそんなことを言いたいのではない。薬学的な知識や技能をもとに薬剤師が患者さんにできることをきちんとしましょうということ」と強調。「薬を渡すことが目的ではなく、疾患の治療が本来の目的。その目的を果たすための業務に注力しませんか、という問題提起」と語った。
薬剤師は投薬後も、服用できているかどうか、問題は発生していないかなどのフォローアップを十分行い、必要に応じて医師にフィードバックしたり、処方変更を提案したりすることが求められると指摘。「薬を渡すことだけが仕事ではなく、その後もきちんと患者の薬物治療に責任を持つ。これがかかりつけと称しているものの本質だと思う」と指摘した。
その一方、「患者さんに対する仕事をしようと思うと時間も人手も足りなくなる。対物業務の効率化や省力化が当然必要になることは、普通に考えれば分かると思う」と示唆した。
地域包括ケアシステムを推進する中で今後、薬局には幅広い役割が求められる。紀平氏は「昔、薬局薬剤師は、街の中で数少ない理系の人として知恵袋的に活躍してきた。処方箋が外に出るようになって調剤対応が増加した今、目の前の処方箋をさばくことだけが自分の仕事だと思ってしまっている薬剤師がいるのではないか。それが昨今の薬局への批判につながっている。そのことを改めて考えないといけない」と呼びかけた。
シンポジウムには日本薬剤師会の山本信夫会長も登壇。昨年末時点で705軒の健康サポート薬局を「当面1万5000軒を目標に増やしたい」と語った。
ただ、取り組むにあたっては「隣の薬局がこの看板を下げているからうちも下げよう、というような思いで健康サポート薬局を出されてしまうと『ちゃんとしたことをやってくれない』となって薬剤師の評価は落ちる」と言及。「なんとなくではなく腹をくくって、覚悟を決めて、健康サポート薬局になろうと思わなければいけない」と求めた。