医療分野で重要となる液体サンプルの分析
岡山大学は3月26日、テラヘルツ波を用いて、16ナノリットルの超極微量の液滴のpHを計測することに成功したと発表した。この研究は、同大大学院自然科学研究科(工)の紀和利彦准教授の研究グループによるもの。研究成果は「Optics Express」に掲載されている。計測は、独自に提案した新しい顕微鏡「テラヘルツ波ケミカル顕微鏡」を用いることで初めて実現した。
画像はリリースより
液体の成分を少量のサンプルで分析することは、医療、生命、環境の分野で重要となっている。微少量の血液で医療診断が実現できれば、患者負担の低減が期待できる。
テラヘルツ波は、これまで不可能であった非破壊検査、分析を実現できる新しい電磁波として、近年注目を集めている。しかし、テラヘルツ波は、水に吸収されてしまうため、液体の分析が不得意だったという。
タンパク質や糖などの量も計測可能
そこで研究グループは、テラヘルツ波を用いた液体の分析を可能にするセンサである「センシングプレート」と、そのセンシングプレートの信号を読み出す装置「テラヘルツ波ケミカル顕微鏡」を開発。この技術は、液体をセンシングプレートに滴下するだけで計測ができるため、原理的には今後、1フェムトリットル(1000兆分の1リットル)の液体でも計測可能だという。
このテラヘルツ波ケミカル顕微鏡では、カリウムイオンやナトリウムイオンなど、血中に含まれ、診断に重要なイオンの濃度が計測できることもわかっており、タンパク質や糖などの量も計測可能だという。研究グループは、「今後、このようなイオンの計測と組み合わせることで、蚊が吸うよりも遥かに少ない血液で病気の診断が可能になると考えている」と述べている。
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・岡山大学 プレスリリース