転写制御およびDNAの修復に関与するHMGB1
岡山大学は3月22日、抜歯後の骨治癒に、炎症メディエーターであるタンパク質「HMGB1」(High Mobility Group Box 1)が関与していると発表した。この研究は、同大大学院医歯薬学総合研究科の青柳浩明大学院生、山城圭介助教、高柴正悟教授(歯周病態学分野)と、西堀正洋教授(薬理学)の研究グループによるもの。研究成果は、英科学雑誌「Journal of Cellular Biochemistry」に掲載されている。
画像はリリースより
HMGB1は、真核生物に存在する分子量30kDaの非ヒストンDNA結合タンパク質。クロマチン構造変換因子として機能し、転写制御およびDNAの修復に関与する。その一方で、組織の損傷や壊死によって細胞外へ分泌された場合、炎症性サイトカイン遺伝子の発現を増強する炎症メディエーターとして機能することも知られている。
近年、HMGB1は損傷を受けた組織の創傷治癒過程において組織の再生を促進するとの報告があり、特に、軟骨内骨化様式の治癒過程を示す骨折モデルマウスにおいてもその作用が報告されていた。しかし、抜歯窩の治癒過程など膜内骨化様式の治癒過程において、HMGB1がどのように影響を及ぼすのか、その詳細なメカニズムは明らかになっていなかった。
抗HMGB1抗体投与で血管や骨の新生が遅延
今回、研究グループは、抜歯後の周囲組織からHMGB1が分泌されることに着目。抗HMGB1抗体をマウスに投与して、抜歯後の治癒への影響を確認した。その結果、抗体を投与すると、歯肉上皮細胞と周囲の炎症性細胞では、HMGB1の核外への移行が阻害され、抜歯後初期の炎症が抑制された。その影響によって、抜歯窩での血管や骨の新生が遅延。抜歯後の骨治癒が遅延したという。これらの結果から、抜歯後の骨治癒に必要な炎症反応をHMGB1分子が制御していることが明らかとなったとしている。
HMGB1が誘導する初期炎症をコントロールすることができれば、治癒を促進することによって新たな再生医療につながる可能性がある。研究グループは、「将来的に抜歯後の骨治癒に関する新規治療法開発につながることが期待される」と述べている。
▼関連リンク
・岡山大学 プレスリリース