1万1,876人が参加した大規模ウェブ調査で判明
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は3月19日、うつ病と体格、メタボリック症候群、生活習慣が関連することを、1万1,876人の日本人が参加した大規模ウェブ調査で明らかにしたと発表した。この研究は、同神経研究所疾病研究第三部の功刀浩部長、秀瀬真輔医師、株式会社ジーンクエストの齋藤憲司研究員らのグループによるもの。研究成果は「Journal of Psychiatric Research」に掲載されている。
画像はリリースより
うつ病は脳の病気と考えられているが、近年、食事や運動といった生活習慣や、肥満やメタボリック症候群などの生活習慣病がうつ病の発症リスクと関連することを示唆する報告が増えている。しかし、日本での検討はいまだに少なく、比較的小規模の参加者での検討や、個別の要因との関連を報告したものがほとんどだった。
そこで研究グループは、うつ病患者と対照者を含む1万1,876名の日本人を対象とした大規模ウェブ調査により、うつ病と体格、メタボリック症候群、生活習慣の関連について総合的に検討した。
うつ病の治療や予防には栄養学的アプローチも重要
調査参加者のうち、うつ病に罹患したことがあると答えたのは1,000名で、残りの1万0,876名を比較対照群とした。心理的ストレスレベルの簡易的な指標としては日本語版K6テスト値を用い、BMI値は身長と体重から計算、18.5未満を体重不足、18.5~25未満を正常体格、25~30未満を過体重、30以上を肥満とする欧米の定義を用いた。朝食や間食・夜食の頻度は4点評価(まれ、1~2日/週、3~4日/週、ほぼ毎日)によって行われ、軽度、中等度、強度運動および飲酒の頻度は、週当たりその活動に費やした日数で評価した。
その結果、うつ病に罹患したと答えた人たち(うつ病群)とそうでない人たち(対照群)のK6テストのスコアの平均はそれぞれ14.1点と9.8点で、うつ病群は対照群と比較して、ストレス症状が強いことを確認。うつ病群では対照群と比較して、BMI30以上の肥満の割合が対照者と比べて有意に高く(オッズ比1.61, 95%信頼区間:1.25~2.08)、正常体格(BMI 18.5~25未満)の人の割合は有意に低くなっていた(オッズ比0.76, 95%信頼区間:0.67~0.87)。また、BMI 18.5未満の体重不足もうつ病群に多かったという。メタボリック症候群関連疾患のうち、脂質異常症の人の割合は、うつ病群は対照群と比べて有意に高かった(オッズ比1.53, 95%信頼区間:1.27~1.84)。また、糖尿病もうつ病群に有意に高い結果だった(オッズ比1.48, 95%信頼区間: 1.06~2.06)。しかし、高血圧とうつ病との間に有意な関連はみられなかった。
食生活習慣に関しては、うつ病患者では、間食・夜食の頻度が有意に高く、朝食の頻度が有意に低くなっていた。特に、朝食をほぼ毎日食べる人の割合はうつ病群で少なく、朝食を食べることがまれであると答えた人はうつ病群で多かった(ほぼ毎日vs.まれ:オッズ比0.65, 95%信頼区間:0.54~0.77)。反対に、間食や夜食をまれにしか食べない人の割合はうつ病群で少なく、間食や夜食を食べることがほぼ毎日であると答えた人はうつ病群で多い結果だった(ほぼ毎日vs.まれ:オッズ比1.43, 95%信頼区間:1.20~1.70)。また、運動では中等度(オッズ比0.82, 95%信頼区間:0.72~0.94)から強度(オッズ比0.78, 95%信頼区間:0.68~0.90)の頻度が有意に低くなっていた。
これまでうつ病の治療や予防として、服薬やストレスの対処などが重要であることが指摘されてきたが、今回の知見は、栄養学的アプローチもうつ病の治療や予防において重要な役割を果たす可能性を示唆している。研究グループは「研究によって得られたうつ病と関連する潜在的なリスク因子について、前向き研究で調査することが期待される」と述べている。
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・国立精神・神経医療研究センター プレスリリース