被災者の医療費自己負担を免除する施策を評価
東北大学は3月19日、東日本大震災後の宮城県の医療サービス利用の変化を明らかにする研究結果を発表した。この研究は、同大大学院歯学研究科歯学イノベーションリエゾンセンターの坪谷透助教、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の松山祐輔研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、科学雑誌「The Tohoku Journal of Experimental Medicine」に掲載された。
画像はリリースより
東日本大震災後には、被災者の医療費自己負担を免除する施策が導入された。同施策は、宮城県では2013年4月から2014年3月の間一時中断され、2014年4月よりその対象を縮小し再開されている。
このような政策を施行したものの、実際に、医療機関の利用状況がどのように影響を受けたかについて、これまで研究されていなかったという。
自己負担免除の中断で医療機関利用が減少
そこで研究グループは、宮城県の毎月の医療費および受診件数(レセプト枚数)を分析し、震災後の自己負担免除施策が医療サービス利用に与えた影響を評価。分析の結果、宮城県の医療サービス利用は震災後約1年にわたり増加し、その後は横ばいまたは緩やかに低下していたことが判明した。医療費の自己負担が免除される制度が中断される直前には、医療機関の利用が急激に増加し、自己負担免除が中断された後には医療機関の利用は減少したという。
これらの変化は、医科よりも歯科で大きく観察され、また後期高齢者(自己負担原則1割)よりも、国民健康保険加入者(自己負担原則2~3割)で明確に観察。また、免除中断時の医療サービス利用減少は、免除対象者が多い市町村で大きかったという。
今回の研究成果について、研究グループは、「今後も起こりうる大災害のあとには、このような被災者を支える政策を施行することが重要」と述べている。
▼関連リンク
・東北大学 プレスリリース