骨肉腫に次いで小児に発生する骨軟部腫瘍
順天堂大学は3月19日、ユーイング肉腫において、がん遺伝子のEWS/FLI1融合遺伝子が制御するタンパク質の網羅的解析から、XBP1を中心とした小胞体ストレス応答が悪性度に関与していることを発見し、さらにXBP1阻害剤「Toyocamycin」が高い抗腫瘍効果を持つことを発見したと発表した。この研究は、同大医学部整形外科学講座(順天堂大学医学部附属順天堂医院整形外科)の末原義之准教授、田邊雄医員、金子和夫教授、人体病理病態学講座の齋藤剛准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米国のがん治療の科学誌「Oncotarget」オンライン版で発表されている。
ユーイング肉腫は、骨肉腫に次いで2番目に小児で多い骨軟部腫瘍。初診時転移症例での5年生存率が20%以下と極めて悪性度が高いものが多く、新規治療法の開発が必要とされている。ユーイング肉腫の9割に、第22染色体及び第11染色体の転座により生じるEWS/FLI1融合遺伝子が認められていることから、融合遺伝子が悪性度を左右していると考えられる。しかし、EWS/FLI1融合遺伝子がどのようなタンパク質や細胞内経路に影響を与えて悪性化するのかよくわかっていなかった。そこで研究グループは、悪性度を左右する因子を明らかにすることを目的として、今回、EWS/FlI1融合遺伝子が制御するタンパク質の挙動を網羅的に調査した。
XBP1阻害剤Toyocamycinに高い抗腫瘍効果
まず、EWS/FLI1融合遺伝子を含む4つのユーイング肉腫細胞株に対してEWS/FLI1融合遺伝子の発現抑制を行い、網羅的にタンパク質を解析したところ、約5,600個のタンパク質が候補として挙げられた。その中から有意差をもち、かつ共通発現している89種類のタンパク質に絞り込み、パスウェイ解析で主要経路のリスト化を行ったところ、EWS/FLI1融合遺伝子の影響因子として、小胞体ストレス応答経路を担う転写因子として知られるXBP1の同定に成功したという。
画像はリリースより
次に、ユーイング肉腫におけるXBP1と悪性度の関係を明らかにするため、機能解析を行った。その結果、XBP1の阻害活性をもつToyocamycin(トヨカマイシン)が、ユーイング肉腫細胞株の細胞増殖抑制能を示すことを発見。さらに、ヒト由来の腫瘍組織を移植したユーイング肉腫ゼノグラフトモデル(マウス)においても、Toyocamycinが腫瘍の体積・重量の両方において濃度依存的に優位に腫瘍の増大を抑制し、抗腫瘍効果を持つことを見出したという。
研究グループは、「今後、臨床応用に向けてToyocamycinを含めた小胞体ストレス応答阻害剤の作用機序、副作用の解明を進め、新規治療法の開発へ繋げたい」と述べている。
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