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脳内アミロイドβ量を減少させる光触媒を開発-JST

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2018年03月22日 PM02:00

臨床応用可能な近赤外光で作用する光触媒の開発

)は3月16日、近赤外光の照射によりマウス脳内のアミロイドβペプチド(Αβ)の凝集体を減少させる光触媒の開発に成功したと発表した。この研究は、東京大学大学院薬学系研究科の金井求教授、ERATO金井触媒分子生命プロジェクトの相馬洋平グループリーダー(講師相当)、同大大学院薬学系研究科の富田泰輔教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Chem」オンライン速報版で公開されている。

タンパク質は適切に折り畳まれ固有の立体構造を形成することで、それぞれ固有の機能を担うが、誤って折り畳まれるとアミロイド凝集体と呼ばれるオリゴマーや線維の塊を形成する。アミロイド凝集体による細胞傷害性はさまざまな疾患を引き起こすと報告されており、アミロイドβペプチド(Αβ)の凝集体による神経細胞の傷害と、これに伴うアルツハイマー病の発症は、その一例と考えられている。

研究グループでは、触媒反応を利用した新しいアルツハイマー病治療法の確立を目指している。これまでに光照射によりΑβ凝集体のみを選択的に酸素化し、Αβの凝集性や細胞傷害性を抑制させる触媒を開発してきた。この触媒は、生命活動にとって必要な生体分子とは反応せず、凝集体を形成したΑβのみに反応するという特徴があり、副作用を低減する観点で重要な性質となる。しかし、これまで開発した触媒は細胞傷害性が高い上、生体組織への透過性が低い短波長の光を照射する必要があった。そこで研究グループは、臨床で応用可能な近赤外光で作用する光触媒の開発に取り組んだ。

脳内のΑβ凝集体の量が顕著に減少

ウコンに含まれる化合物「」は、Αβと親和性が高いことが知られている。この性質を利用し、Αβとの結合により蛍光を発する色素も開発されている。しかし、これらの化合物には、光触媒として酸素化を起こす機能はなく、酸素化を起こすためには、Αβと結合しやすい酸素を発生させる必要がある。研究グループは、クルクミンの構造を基に、近赤外光を照射することにより結合しやすい酸素を効率的に産生し、Αβを酸素化できる独自の光触媒を開発した。


画像はリリースより

今回開発した光触媒は、生きた細胞が存在する状況でも機能し、Αβ凝集体に由来する細胞傷害性を低減させることができた。また、生体組織への透過性が高い近赤外光を照射することで、マウスの皮下に存在するΑβの酸素化を実現した。さらに、アルツハイマー病モデルマウスの脳内に触媒を投与し、近赤外光を照射したところ、脳内のΑβ凝集体の量が約半分と、顕著に減少したという。

今回の研究成果について、研究グループは、「触媒反応を用いた新しいアルツハイマー病治療法へと展開できれば、将来、触媒自体を医薬として利用するという新しい治療法をさまざまな難治性疾患に提供できると期待される」と述べている。

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