北陸の心房細動患者を対象とした調査研究で
金沢大学は3月15日、北陸の心房細動患者を対象とした調査研究を通して、血中の脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値が高いと脳梗塞の発症リスクが高まると発表した。この研究は、同大医薬保健研究域医学系循環器病態内科学の山岸正和教授、川尻剛照准教授、附属病院循環器内科の津田豊暢助教、附属病院検査部の林研至助教らの研究グループによるもの。研究成果は「Circulation Journal」に掲載されている。
画像はリリースより
心房細動は脳梗塞や心不全、認知症などを引き起こす可能性があり、高齢者に多くみられる。現在国内には140万~150万人の患者がいるとされ、70歳代の6%が心房細動であるという報告もある。心房細動によって脳梗塞を発症すると、半分以上の患者が死亡、寝たきり、要介護となるため、発症予防が極めて重要と考えられている。
研究グループは、2013年から北陸の心房細動患者の年齢、生活習慣、持病、治療状況を登録し、1年ごとに脳梗塞や出血などのイベント発症状況や治療の変化などを追跡している。
BNP値170pg/ml以上の患者で発症率高く
今回、追跡開始2年目のデータにより、登録時のBNP値が170pg/ml以上の患者では脳梗塞を含む血栓塞栓症の発症率が高いことを突き止めたという。BNP値170pg/mlを基準とすると、1年間に、基準値以上の患者の3.2%が血栓塞栓症を発症した一方、基準値未満の患者の0.7%が血栓塞栓症を発症した。基準値以上の患者の血栓塞栓症の累積発症率は、基準値未満の患者に比べて、有意に大きかったという。
BNPは、心機能が低下して心臓への負担が大きいほど数値が高くなる。18.4pg/ml以下が正常値とされ、血液検査で簡単に測定することができる。今回の研究成果について、研究グループは、「心房細動の重症度を評価する際の新しい目安となり、心房細動における脳梗塞の発症を予測し、予防するための指標となるなど、国内における心房細動診断・治療のガイドラインにも加わる可能性がある」と述べている。
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